4-4 継承鍵

「……は?」

 上京が呆然と、自分の胸からから飛び出す棒を見つめた。


 棒は青銅製で、ギザギザとした突起をいくつか備えていた。鍵のような見た目をしている。棒は彼女の体を貫通しているが、物理的に肉体を突き破っているわけではない。バグを起こしたテクスチャが重なるように通り抜けているだけだ。


 金属の棒が引かれた。上京の体も一緒になって引っ張られる。


「なに……?」

「うそ!?」


「おいっ……」

 僕は咄嗟に上京の手を取った。後ろへ引かれる彼女を留めようとする。何が起こっているかわからず、この行為が正しいのかもわからなかった。藤堂と姉さんは突然の出来事に呆然と立ち尽くしてしまう。


 鍵? 鍵を模した魔導具の類は多い。だが、人に突き刺して使うものなんてあったか? そもそもこの状態、上京の体に何が起こっている? どうしたらいい? 無理に引き抜いたら彼女を傷つけかねない。


「高人くん。邪魔しないでよ」

 僕の思考を破って、彼女の背後から声が聞こえた。覚えのある声だ。

 これは。


「店長……?」

 人影がぬっと現れる。アロハに短パン、ビーチサンダルという胡散臭い恰好。いつもの店長の姿だ。


 だが、店にいるときのような飄々とした、いい加減な雰囲気は微塵もない。次の一挙手一投足で何をしでかすかわからない、じっとりとした怪しさを感じる。


「何をして……?」

「んぅ……意外とすんなりいかないな」

 店長が僕の言葉を無視し、鍵をぐっと引っ張る。上京が喉の奥から絞り出すように苦痛の声をあげた。


「何してんだって聞いてんだよ!」

「うるさいなぁ」

 思わず声を荒げた僕に、店長が苛立ちを返す。普段の温厚な態度からは想像もつかない反応だ。余計に混乱する。


 状況が全く掴めない。


「がっ……」

「華ちゃん!?」

 上京が呻いた。鍵が引き抜かれ、彼女の体から力が抜ける。がっくりと崩れ落ちる上京を僕と姉さんで受け止めた。


 店長の手に握られているのは警棒程度の長さの棒だった。柄にあたるところに細かく文字が刻まれている。文様は薄っすらと光り、店長の腕にまで続いているようだった。

 鍵の全容が見えたことで気づいたことがある。鍵の突起は六つだ。まさか……。


「継承鍵……」

「へぇ。見るだけでわかるんだ。さすが」

 店長は嘲笑するように言った。


「先輩! いったい何が……」

「こいつっ……上京から継承魔術を無理やり引き抜きやがった!」


 本で少しだけ読んだことがある。継承魔術を誰かに奪われたとき、強制的かつ迅速に魔術を奪い返すための魔導具――継承鍵と呼ばれるものがあると。それは大きな鍵の形をしていて、継承魔術を奪った人間に突き刺して使うという。


「華ちゃん!」

 姉さんの腕の中で彼女が震え始めた。極寒の地で置き去りにされたように体が冷たくなっていく。


「高人! どうしてっ……」

「継承鍵は突き刺した相手から力づくで継承魔術を捻じ切りほぼ無傷で奪い返すことができる。その代わり相手の体にすさまじい負荷がかかるんだよ。鍵の使用者からすれば略奪者が死のうが知ったことではないというわけだろう」


「じゃあ、華ちゃんはっ……」

「あぁ……うぁ……」

「おい、しっかりしろ!」


 上京の顔色がどんどん青白くなる。さっきまで火傷をしていたはずの手は紫色に近づき凍傷を負っていく。


 継承魔術は魔術基盤に深く結びついている。それを傷つけられたせいで魔力が内側で暴走しているのかもしれない。

 このままでは自分の魔力で凍死しかねない。


 だが、店長は手にした継承鍵を検めているだけで、上京の急変には一切興味を示さない。


「お前はっ……なにしたかわかってんのかっ!?」

「わかってるよ? 悪く思わないでよ高人くん。オーナーの命令だからさ」

「オーナー……? 冷泉六峯か……」


 迂闊だった。くそっ……常識で考えれば当然じゃないか。冷泉百貨店は冷泉家が経営する店だ。そこで開く魔術素材商店を、どこの馬の骨かわからない魔術師に任せるわけがない。自分のよく知っている者に託すはず。


 なら、店長は冷泉家傘下の魔術師か……。


「天城原の結界を破って侵入したのもお前だな。上京を監視するためか」

「まぁね。あんなちゃちな結界で本物の魔術師を止められると思ってるならお笑いだよ」

 店長は「本物」に力を込めて言った。


「なぜだ。上京は冷泉六峯の娘のはず。娘の命を危険に晒すような……」

「娘? 違うよ。ただの倉庫さ」

「倉庫?」

 僕が聞き返すと、店長は継承鍵を振り回しながら繰り返した。


「そう、倉庫。冷泉六花を隠しておくためのね。それなのにこいつときたら」

 店長の声に吐き捨てるような嘲笑が混じる。


「そこらじゅうで使うから隠し場所の意味がない。それで、回収しろって命令されたわけ。でもさぁ、素直に返せって言って返してくれるわけがないだろう? だから#SSsの戦いでこいつが弱るのを待ったんだよ。冷泉六花は自動展開型の強力な防御装置だ。でもその装置を動かす魔力が無くなればうまく機能しない。もっとも」

 店長がため息をつく。


「#SSsが思ったより雑魚ばっかでさ。こいつを弱らせる魔術師がなかなか出なかったんだよ。もう自分で戦おうかと思ってたときに、高人くんが来てくれたってわけ。まぁ、まさか偽物の魔術師が冷泉六花を持った奴に勝つなんてね」


「偽物……?」

「あぁ、だってそうだろう? 家柄もない、継承したものもない、親が魔術師でもない、自前の魔術素材も揃えられないようなのは魔術師とは言わないよ」


 僕は歯ぎしりした。こいつは……。


「酷すぎるっ……」

 姉さんが上京を抱えながら、唸るように言った。


「人を、なんだと思ってっ……」

「先輩っ。お姉さんと上京を連れて後ろへ!」

「そうだなっ……"偽造のイミテーション・瑠璃ラピスラズリ"!」


 僕は呪文を唱え、指輪をラピスラズリに変えた。周囲の大気を操作して姉さんと上京の体を一緒に後ろへ飛ばす。

 本当ならこの手であいつをぶん殴りたいところだが……上京との戦いで満身創痍の僕では無理だ。ここは藤堂に任せるしかない。


「おっと。魔術領域が使えるだけの雑魚に僕が負けるとでも?」

「じゃあ試してみる!? "その声はムーン・オーバーわが友の声・ザ・マウンテン"!」

 藤堂が魔術領域を開く。魔力の鎧をまとった彼女が店長に突っ込もうと姿勢を低くする。


 が、直後。

 藤堂が爆発した。


「……はぁ?」

「たまちゃん!?」

 爆風で彼女が吹き飛ぶ。僕たちはそれを茫然と目で追うことしかできなかった。


「一応僕も魔術師なんでね。そう簡単にやられないよ?」

 店長はズボンのポケットからスマホを取り出していた。あの画面は……。


「#SSsのっ……? どうして?」

 店長のスマホには、#SSsのソーサラーとしてのページが映し出されていた。僕や藤堂、上京と同じものだ。


 妙久寺長頼。懸賞金は……三百七十万円!?


「この地区の最高金額! お前だったのかよ……」

「最近忙しくてずっとスリープモードだったんだよ。でもこれでわかっただろ? 君らみたいな木っ端の魔術使いじゃ僕には勝てない」


「くそっ……藤堂!?」

「んぅぅ……何が起こって……」

 爆発に巻き込まれた藤堂はゆっくりと地面から起き上がった。魔術領域が彼女を守ったのが幸いしたのだろう。


「あぁぁ……あぁっ……」

「華ちゃん? 大丈夫!?」

 一方、上京の震えは大きくなっている。このままだと……。


「病院にでも連れてったほうがいいんじゃないのか? もう手遅れかもしれないけどな」

「お前……」

「あぁぁっ……がぁぁっ!」


 上京の震えが咆哮に変わりつつあった。魔力が発散して皮膚がぴりぴりと痺れる。様子がおかしい。ただ内側で魔力が暴走しているだけではないような……。


「なんだ……?」

 僕と姉さんは顔を見合わせた。店長……妙久寺も怪訝な顔をする。


 顔を冷たい風が吹きつける。彼女の魔術と似ている。でも、上京はそんな魔術を使える状態にないはず。何が起ころうとしている?


「がっ……ぐっ……だっ……」

「上京? どうした? 寒いのか?」

「華ちゃん? いったいどうなって……?」

 僕らは彼女の肩を叩いて呼びかけた。上京の目は虚ろで、意識はもうここにないようだった。


「おい……なんなんだよっ」

「やだ……いやだっ……いやだぁぁぁっ!」

 上京を中心に高圧の魔力が放出する。突如周囲の温度が低下する。彼女と戦っていたときの比ではないほどの低温。呼吸が止まる。視界が一瞬でブラックアウトした。


「先輩! お姉さん!」

 横から吹っ飛ばされた。藤堂が僕にタックルしたのだ。

 数秒して呼吸と視界が戻った。僕と姉さんは藤堂に抱えられて上京から離れていた。いや、上京から逃げていた。上京から広がり続ける魔力の波から。


「何? なに? 何がっ!?」

「きょ……距離をとれ藤堂! 死ぬぞ!」

 反射的に叫んでいた。人生で初めて、理解よりも先に直感が結論を下していた。


「うぅ……わぁぁっ!」

 藤堂が地面を蹴って飛んだ。無理やりだったせいか体勢が崩れて地面に転がる。軽自動車並みの速度で公園のフェンスに叩きつけられた。衝撃が全身に走る。


 だが、その甲斐あって魔力の波からは逃れられた。僕はガタガタになった体に鞭を打って立ち上がり、周囲の状況を確認する。


「っ! 姉さん!」

 呻き声をあげる藤堂のそばで姉さんが倒れていた。慌てて駆け寄る。僕と同じところにいたのだ。姉さんも一瞬だが上京の魔力に飲まれてしまったはず。


 幸い、姉さんは気を失っているだけだった。体が冷えているものの、凍傷を負っているような痕跡はない。


「うぅ……先輩、大丈夫ですか? お姉さんも……」

「あぁ。助かった藤堂。お前こそ怪我無いか?」

「えぇ。熱かったり寒かったりで滅茶苦茶ですけど」


 藤堂は流石にタフなようで、すくっとしっかり立ち上がった。僕らは公園の中央で光り輝く真っ白なドームに対面する。あれは……。


「魔術領域……外部展開か……」

「魔術領域? 私のと同じ?」

 藤堂が呟く。僕はゆっくりと頷いた。


「あぁ。でもこっちは外部展開型だ。魔術領域には内部展開型と外部展開型の二種類があって後者は魔力を広げた空間を別物に作り変えてしまう」

「じゃあ、ドームの中は別の世界になってるってことですか?」

「多分な」


 少し離れた位置に立っているだけで、皮膚をビリビリと震わせる魔力の圧を感じる。藤堂の魔術領域ですらここまでではない。相当な魔力量だ。


「どうしてこんなことに……上京、魔術領域が使えるんでしたっけ?」

「いや、恐らく継承魔術を無理やり引き剥がされた防衛反応として出てきたんだろう。魔術領域には未知の部分が多いけど、魔術師が死に直面すると発生する可能性が上がるという説もある」


「死に……?」

「上京……」


「なんだ、死ななかったのか」

 妙久寺の声が響いた。上を見ると、彼は炎を吐き出すサーフボードのような魔導具に乗って空を飛んでいた。


「いやビビったビビった。何が起こったかはさっぱりだが、まぁ僕には関係ないことだね」

「なんだとこの!」

 藤堂が飛び上がって妙久寺を追いかけようとする。だが、僕はその肩を押さえて彼女を制した。


「……いまはあいつにかかわってる場合じゃない。上京を助けないと」

「先輩、でも……」

 藤堂が歯噛みして空を見る。妙久寺はボードで飛び去ってしまった。藤堂の脚なら追いつけるだろうが、追いついたところで相手が三百七十万の魔術師ではどうにもならない。


 それに、このままでは上京の命が危ない。


「さっきの店長の口ぶりだと、あいつも予想外の事態だったみたいですね」

「あぁ。上京にとってもこれが初めての領域展開かもしれない」

「……止められます?」


 藤堂が不安そうな声で言った。あまり仲がよさそうではなかったが、やはり心配なのだろう。


「……ん?」

 妙久寺が声をあげた。魔術領域のドームが上へ登っている……?


「……まずいかもな」

「何が、起こって?」

「魔術領域が本格的に暴走し……」

 僕の言葉は遮られた。突然の吹雪に。寒風が全身を打って思わず呼吸が止まる。


「うわぁっ!」

 藤堂が慌てて伏せた。姉さんの上に覆いかぶさって庇おうとする。


「魔術領域はあの中で展開されてるんじゃ!?」

「普通はな! それが外へ漏れ出しているから暴走って言うんだ!」

「くそっ! やばいぞ!?」


 空を飛んでいた妙久寺も流石に慌てた口調になる。光のドームから背を向け、一気に飛んで逃げようとする。

 が、ドームが羽根を開いた。六枚の羽根のうちひとつに妙久寺が叩き落される。


「ぐぁぁっ!?」

 短い悲鳴がとどろく。羽根に触れた彼は声すらも凍り、なすすべもなく落下して見えなくなった。


「……嘘でしょ」

「ほとんど災害だぞ……それにあの羽根は……」


 白いドームは完全に地面から離れ、球体としての全貌を露わにしていた。

 六枚の羽根を広げた姿はまるで、冷泉六花そのものだ。


 上京の潜在意識が失ったものを求めて彷徨うかのように、球体は羽ばたいてゆっくりと動き始める。羽根が空気を叩くたびに冷たい突風が吹きつける。周囲の家の窓が揺れ、街路樹が折れんばかりの勢いでなびいた。突然台風が来たような騒ぎに人々が窓から顔を出す。


「先輩、どうしたら……」

「止めないと……これはもう上京の命どうこうってだけの問題じゃない」

 口ではそう言いつつも、考えは脳みそを上滑りしていく。


「止めるって、どうやって!?」

「……方法はある。あの魔術領域に魔力を供給しているのは上京自身だ。上京が自分の魔力を注ぎ込むと同時に周囲の自然エネルギーを魔力に変換して魔術領域へ流している。裏を返せば、あの空間から上京がいなくなれば領域も成立しなくなるはずだ。心臓のない動物が生きられないようにな」


「上京を空間から出す? でもあの中は」

「あぁ……」

 僕は内部で感じた寒さを思い出して身震いした。呼吸すら不可能になるほどの気温だ。まともに突っ込んだら一瞬で凍え死ぬ。


「私がっ。私の魔術領域ならっ!」

「だめだ藤堂。お前の魔術領域に寒さへの耐性があるとは思えん。物理的な攻撃ならともかく……それに、どうやってあんな上空へ行く気だ?」

「そんな……」


 藤堂が肩を落とす。僕は両手の指輪を見た。この状況を何とかする指輪はあった……あったのだが、炎を操れるルビーも時間に干渉できるオパールも使ってしまった。次に使えるのは明日だ。遅すぎる。


 あとは……。右手で握り続けていた針を見る。ほんの僅か、吹けば消し飛ぶような大きさのルビー。

 だめだ。これでは……上京の魔術領域では一秒ももたない。


 炎で自分の周囲の温度を上げる。それだけできればいいのに……ルビーが手元にあればできる。難しいことじゃないはずなのに……。


「くそっ……」

 魔術素材すらままならない魔術師……あいつの言った通りだ。これでは、偽物の魔術師でしかない……。


「高人……」

 そのとき、姉さんの弱々しい声がした。意識が戻ったのだ。僕は慌てて姉さんに視線を向ける。


「姉さん! 大丈夫?」

「これを……」

 姉さんは左腕を僕へ差し出す。意図が分からなかったが、手首を振る動きで気づいた。

 時計だ。僕とお揃いの……ということは。


「これにもルビーが?」

「小さいけど、ね……足りるかしら」

「……多分。でも……」

「高人」

 躊躇う僕を姉さんが制した。声色こそ弱いが、その言葉には強い意志が響く。


「魔術は不可能を可能にするんでしょう? だったら……華ちゃんを助けなさい。しっかりね。時計なら……いいわ。いま使わなかったらきっと後悔する」

「姉さん」

 姉さんは時計をはめた腕を僕へ押し付けてきた。僕は留め金を外して時計を受け取る。


「……ありがとう」

「必ず」

「あぁ」


「先輩っ」

 藤堂が緊張した声で僕を呼んだ。上京の魔術領域が翼を広げ、ゆっくりと移動を始める。


「あれ……どこへ向かって?」

「方角的には、あれは……」


 続けようとしたが、突然の共鳴音に僕は言葉を切らざるを得なかった。魔術領域の翼が大きくうねり空気をかき乱す。急激に冷やされた空気中の水分は凍りつき、大きな塊となって……。

「こっちに落ちてくる!?」


 サッカーボールほどの大きさの氷塊がいくつも降り注ぐ。勢いのついた塊に当たれば命はないが、予想外の現象だったせいで反応が遅れてしまう。

 氷塊がこちらへ迫る。ぶつかるっ!?


「"Amendment Ⅱ修正第二条"」

 だが、僕らに衝突する直前で氷塊は砕け散った。銃声とともに。


「レディーのピンチを助けたつもりが……まさかお前らとはな」

「ジョニー!」

 公園の入り口に見慣れたカウボーイが佇んでいた。彼は二丁の銃を構えつつ困惑した顔で僕らと魔術領域を交互に見る。


「あー、こりゃどういうことだ? そこで辛そうにしてるのはお前の知り合いか?」

「姉さんだ」

「ほう。ひねくれ坊主の姉さんにしてはびじ……いってぇな!」

 ジョニーが飛び上がった。藤堂に脛を思い切り蹴り飛ばされたからだ。


「言ってる場合じゃないの! 上京があの中に」

「本気で蹴り入れることないだろ……上京?」

「詳しい説明は後だ。あれを止めたい」

 ジョニーの言葉を制して僕は言った。彼はテンガロンハットを直して息をつく。


「止めるだ? あんな滅茶苦茶なもんをか? 警察に通報するレベルじゃねえのか?」

「藤堂が言ったように、中に上京がいる。警察に任せたら『殺して止める』一択になるだろう」


「なるほど……でも止めるあてはあるのか?」

「あるにはある」

 僕は握りしめた時計を見せて言った。


「でも一人じゃ無理だ。協力してほしい」

「……はぁ。いいぜ。色男は厄介ごとに巻き込まれるもんだからな」

「助かる。それじゃあ藤堂」

 僕は藤堂に向き直り、姉さんを彼女に預けた。


「姉さんを家へ送ってくれ。外じゃ危険すぎる。お前の魔術領域なら、そのあと僕らに簡単に追いつけるはずだ」

「任せてください!」

 藤堂が姉さんを支え、真剣な表情で頷いた。だが直ぐに疑問の表情になる。


「……追いつくって、先輩はどこへ?」

「あの魔術領域が行き着く方角に行く。……天城原学園へ」

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