1-5 #SSsのルール

「今日は、用事があって、迎えに行けない……っと」


 放課後、僕は公園で姉さんにメッセージを打っているところだった。藤堂が上京にやられて転がり出てきた公園だ。姉さんは仕事中なので、メッセージは既読にならない。僕はスマホをポケットにしまって公園を見渡した。


 公園、と言っても住宅街の真ん中に申し訳程度に存在する空き地のようなところだ。雑草の生えた砂場とまたがって遊ぶ用のパンダの像がある以外は、遊具らしいものもない。そのせいで猫の子一匹いないありさまだ。


 寂しい公園だけど、いまは都合がいい。


「先輩、お待たせしました」

「あぁ、来たか」


 藤堂が小走りに公園へ入ってくる。一旦帰った後で着替えたのか制服姿ではない。タンクトップの上からパーカーを羽織り、ホットパンツとニーソックスで脚を包むスタイルだった。ビジュアル系バンドの追っかけみたいな格好だなと思った。


 今日のパーカーは黒ではなく白色で、生地も薄手だ。だがおそらく、猫の耳とか眼とかついているのだろう。首輪も相変わらずだった。


「持ってきましたよ、先輩」

「ありがとう」


 彼女はパーカーのポケットからスマートフォンを取り出した。屋上で見たぼろぼろの機体ではなく、真新しい新品のものだった。ボディには傷ひとつなく、鏡のように僕の顔を反射している。……藤堂の指紋で既に汚れているけど。


 僕は指紋を軽く拭ってから電源を入れた。画面が白く光る。立ち上がるまでに時間を要するらしく、画面は真っ白のままだった。


「しかし……自分で出たいと言っておいてなんだけど、こんなすんなり参加できるものなのか? #SSsは」


「普通はできませんよ。でも先輩は超幸運でした」

 藤堂は腕を組み、得意げな顔で言った。


「通常、#SSsに参加するにはスカウトの目に留まって勧誘を受ける必要があります。でも私はつい最近、#SSsの運営から一台だけ新しいスマホを貰ったんです。スカウトの代わりに新規参加者を獲得してくれって。参加者が減って運営も新しい風が欲しいとかなんとか」


「へぇ。じゃあお互い渡りに船だったわけだ」

「ワタリはカニですけど、そうですね。めんどくさいなーどうしようかなーと思ってたところに先輩が来たんで楽できました。上京華との戦いを邪魔したことは水に流してあげます」


 藤堂が鼻をふんと鳴らす。そうしている間にスマホが起動した。画面に#SSsのロゴが浮き上がる。


「で、どうすれば参加できるようになるんだ?」

「簡単ですよ。えっと、どうやるんだっけ?」

「おい」


 首を傾げる藤堂に僕はため息をついた。こんなのが先達で大丈夫なんだろうか。まぁ、贅沢を言える立場じゃないけど……。


 呆れる僕の手元で、ピロリンと軽快な音が響いた。スマホからだ。画面を見ると、そこには「石見高人 十六歳 天木原学園 承認しますか?」と文字が浮き上がっている。僕の写真まであった。生徒手帳に張り付けたられたのと同じ、証明写真めいたものが。


「な、なんだこりゃっ。魔力による承認システム!? でも、いったいどこからデータを引っ張って……?」


「そうそう思い出しました。スマホに魔力を流せば勝手に初期設定が終わるんですよ。なんかすごいエンジニアがいるとかで」

「すごいなんてレベルじゃないぞ……」


 一般的な魔力による承認システムは、それだけ聞くとすごそうだが実際にやっていることはICカードやバーコードによる承認と変わらない。データを予め入力しておき、端末が認識した手掛かりと照らし合わせて個人を特定する。


 だけど、これはその域を軽々と超えているものだ。僕は#SSsに魔力データも顔写真も提供した覚えがない。おそらく向こうが学園のデータバンクから勝手に盗んだのだろうけど……いや、学園にあるのは名前や写真だけだ。それでは魔力と照合できない。僕の魔力の型はいったいどこから?


 レアな魔術属性持ちとはいえ、そう軽々に魔力を垂れ流したりはしていないぞ……? #SSs……もしかしたら気楽にやばい暗部に足を踏み入れてないか、僕は。


「先輩、スマホ眺めてないで承認してくださいよ。始まんないですよ」

「え? あぁ……」


 また余計なところに考えが飛んでいた。僕は軽く頭を振って、画面に映る「承認」のボタンを押した。すると画面に「ようこそ石見高人様」と映し出され、すぐに地図のようなものが現れる。


 地図の中心で白い矢印が光っている。すぐそばに赤い丸が点滅する。

 スマホを色々な方向に傾けてみた。普通の地図アプリと同様に、スマホの向いている方向と画面の矢印が連動して動くようだ。


「この矢印が自分か……」

「で、そばにある赤い点が私ですね」


 藤堂は自分のスマホをこちらに向けた。ひび割れたガラスの向こうで、僕のものとほとんど同じ画面が映し出されている。


 ピロリンとまた音が鳴った。画面の上部に窓が現れる。「近くにアクティブなソーサラーがいます:藤堂たま」と書かれている。藤堂の顔写真も一緒だ。


「アクティブ?」

「戦う覚悟がオーケーってことです。下にあるボタンで自分の状態を変えられますよ。やってみてください」


 僕は促されるままにボタンを押した。緑色の「ウェイト」が赤色の「アクティブ」に代わる。

 直後、スマホが震えて新しい通知が飛んできた。「ソーサラーから対戦の申し込みがあります:藤堂たま」と。


「これ、押したら始まっちゃうのか?」

「そうです。もうやっちゃいますか?」

「いや待て待てっ」


 にやりと好戦的な笑みを浮かべる藤堂を僕は慌てて制した。何もわからないまま殴り合いの喧嘩を始める気はない。


 僕は一旦、状態を「ウェイト」に戻しておいた。申し込みの通知が画面外へ消えていく。こうしておけば誤タップでバトル開始、なんて間抜けは起こらなさそうだ。


 そのままスマホをいじり、感覚を掴む。赤い点をタップするとその人物情報が飛び出してくる。それをさらに触れば詳しい情報も閲覧できる。


「藤堂たま……勝率八十六パーセント? すごいな……それで、懸賞金がひゃ、百二十万円だと?」


 思わず大声を出していた。この地区で次点らしい上京が百七十万円だから、彼女と遜色ないクラスだということになる……けど……。


「僕がお前に勝ったら百二十万円貰えるって解釈でいいんだよな?」

「そうですね。勝てたら、ですけど」


 藤堂は含みのある言い方をした。早く戦いたがっているのか、その場でぴょんぴょん飛んだり足踏みをしたりと落ち着きがない。


 僕は藤堂の情報を消して、また少し画面をいじってみた。矢印をタップすると自分の情報も表示されるようだ。


「石見高人、勝率ゼロパーセント……まぁこれは当然か。懸賞金は……十万円……」

「最初はみんな十万円スタートですよ。私は半年で百万突破しましたけどねっ」

「これはじゃあ、藤堂が僕に勝ったら十万円ってことか?」


「ですです。だから」

 藤堂は言葉を切った。パーカーのフードを被り、姿勢を低くとる。


「早くやりましょうよ。私、お小遣い欲しいんですよ。新作のゲームが出るのでっ」

「お前……金づる欲しさに僕を誘ったんじゃないだろうな?」

「まさかぁ」


 藤堂は八重歯が見えるほど大きく口を歪めた。無邪気さがかえって不気味だ。

 だが、やるしかないか。最初の一歩を踏み出さなければ話は始まらない。それに、物事はたいてい、最初の一歩だけが重たいのだ。魔術の実験でもなんでも、一度走ってしまえば存外大したことなかったりする。


「よし、やるぞっ!」

 僕は宣言するように叫び、状態を「アクティブ」に戻す。即座に申し込みの通知が飛んできた。


 僕は自分の両手を見る。すでに指輪は十指に装着済みだ。上着を脱ぎ、適当な木の枝にかけておく。腕時計がかちゃりと音を立てた。おっと、これは壊れたら困る。時計も外してポケットへ入れた。


「ボタン押してください。カウントダウンが始まって試合開始です」

「あぁ……お手柔らかに頼む」

「もちろん、病院送りにはしませんよ。でも八百長はご法度なんで、勝ちますけどっ」


「そうかい……」

 僕は「受理」のボタンを押した。すぐにスマホから音声でカウントが始まる。五秒前から、四、三、二、一。


 試合開始!


「"その声は我が友の声ムーン・オーバー・ザ・マウンテン"!!」

 藤堂が即座に唱えた。何かが来る。僕は咄嗟に”偽造の金剛石”を使いたくなったが、ぐっと堪えた。あの最強の防御壁は僅かな時間しか使えない。考えなしに発動できない。


 攻撃が来るかと思ったが、藤堂はその場で唸るだけだった。彼女の中で魔力が爆発的な増大を始め、小さな体を覆っていく。


「これは……まさかっ」

 僕は目の前の現象に心当たりがあった。短すぎる詠唱と突然の魔力の増大。魔導書でしか見たことがなかったけど……。


 魔力に包まれてぼやけていた藤堂の姿が、再び現れ始める。

 彼女の体は大きな変化を遂げていた。まず眼が……ネコ科の猛獣のように鋭く獰猛なものになっていた。


 手は爪が伸び、四つん這いになって地面に食い込む。踵が伸び、脚も猫のそれに近づいていく。フードの下には僅かだが、猫の耳のような塊も見えた。


 そして、彼女の周囲を魔力が鎧のように囲んでいる。それが虎の形をしていた。魔力でできた虎の体内に藤堂が収まったような外観だ。彼女の視線は、虎の視線を介して僕を射抜き、その場に縫い付ける。


 これは……。

「上級大魔術、魔術領域っ……内部展開だとっ!」

「…………なんですか、それ?」


「………………」

「……………………」

「…………………………はぁ?」

「………………………………は?」


 僕と藤堂は睨みあったまま固まった。


「……いや、お前自分でやったじゃないか。しっかり魔術領域展開しただろ。なんだその、カーレーサーなのに自動車の概念を知らないみたいな状態は」


「そんなこと言っても、聞いたことないですもん。魔術……なんですか? りょう、りょう……良識?」

「魔術領域! なんだよ魔術良識って! 魔術師のテーブルマナーとかか!?」


「知りませんよっ! 変な因縁つけないでくださいっ!」

「こっちのセリフだっ! とんだ当たり屋もあったもんだよっ!」


 僕ががっくりと脱力して膝をついた。緊張の一瞬、大事な初戦だというのに、僕は何をやっているのだろうか。


「魔術領域ってのは、自分の精神力を魔術に変換して強大な力を得る魔術形態のことだよっ。使おうと思って使えるようになるもんじゃない。それが使えるのは恵まれた才能の証だよ」


「へぇ」

「反応薄っ」

 僕は頭を抱えた。


「いいかっ! 僕はいま結構感動してるんだ。極めて珍しい魔術を生で見られてなっ! 魔導書でもYouTubeでもない、いままさに目の前で拝めるとはね。その当人が魔術領域知りませんってどういうことだっ!」


「逆ギレしないでくださいよっ! 知らないもんはしょうがないじゃないですかっ。じゃあもっと詳しく教えてください」


「いいか? 魔術領域には内部展開と外部展開の二種があるんだ。どっちも精神エネルギーを使うけど、心が強くない魔術師だと領域が安定しなくて暴走……」

「隙ありぃっ!」


 何の前触れもなく、藤堂が飛び込んできた。高濃度の魔力を帯びた殺人タックルを、僕はすんでのところで飛びのいてかわした。狙いを外した藤堂は背後にあったパンダ像に突っ込み、木っ端微塵に粉砕する。


「パっ、パンダーっ!」

「くそっ、外したっ!」

 藤堂が悪態をつきながら立ち上がった。常に四つん這いである必要はないらしい。


「あぶねぇなっ! 人の解説中になにすんだっ!」

「戦いはもう始まってんですよっ。よく避けれましたねっ」

「自分でもびっくりだよっ!」


 正直、いまのはヤバかった。僕の魔術は詠唱が短いのが大きなメリットだが、それすら間に合わない速度だった。回避できたのは奇跡としか言いようがない。脱力していて重心が地面から低いところにあったおかげで、咄嗟の横跳びができたのだ。


 でも、あの速度が彼女の通常スピードではないだろう。もしそうなら、このやり取りをする間もなく第二撃を加えればいい。そうしないのは、超スピードのタックルにタメが必要だからとみたっ。


 だったらお喋りで油を売るのは下策だ。速攻で行く。

 魔術領域のモチーフが虎なら、プランはある。


「"偽造の紅玉イミテーション・ルビー"」

 呪文を唱える。左親指の指輪が光り、赤色に染まっていく。ルビーは外見通り灼熱に意味づけられる宝石。そこから発せられる魔術はもちろん……。


「猛獣は火に弱いだろ。食らえっ」

「うわぅ、熱いっ!」


 突き出した左手から炎の渦が噴き出し、回転しながら藤堂へ迫る。まともに食らえば大火傷だが、魔術領域の鎧を纏う彼女なら熱い程度で済むだろう。


 藤堂は慌てて後ろに飛びのき、僕と距離をとった。すかさず魔力を強め、炎の渦で彼女を追いかける。藤堂の目は自由に形を変える炎を注意深く、素早く追っていた。

 予想通りの視線の動きっ。


「くっ、やりますねっ……変幻自在じゃないですかっ」

「それだけじゃない。足元がお留守だぞ藤堂っ。"偽造の藍玉イミテーション・アクアマリン"っ!」


 今度は右の薬指にある指輪が光った。地面を這うように波が広がり、炎を避けて飛び跳ねる藤堂の脚を掬い上げた。藤堂がバランスを崩して空中で浮く。


「わっ、水もっ!?」

「隙だらけだぞっ」


 僕は両腕を振るって炎と水を操る。空中の藤堂めがけて、正反対の属性を持つ二つの魔術を殺到させる。

 直撃すれば熱と水圧でかなり痛いはず。


 だが。

 藤堂は咄嗟に、体を空中で錐揉み回転させた。両手足の魔力をロケットエンジンのように噴射したのだろう。激しい回転に炎と水が巻き取られ、受け流されていく。


「マジかよっ」

「よっ、と。危なっ」


 少しふらつきながらも着地した藤堂が息をつく。彼女が姿勢を低くした。まずいっ、と思ったときには彼女との間合いが無かった。

 腹部に衝撃が走る。その衝撃はすぐに全身に広がった。僕はタックルに吹き飛ばされて公園の端にまで一気に転がっていく。


「ぐへっ!」

「タメが甘いっ?」


 シェイクされる視界の中で藤堂が言った。回転のエネルギーで地面を蹴り、無理やりこちらへの反撃に転換したためだろう。パンダの像を粉砕したときほど威力はないらしい。もしあったら僕は死んでいた。


 とはいえ、防壁が間に合わなかった僕は無防備なまま一撃を食らい、無様に地面に突っ伏す羽目になった。全身が痛い。くそぉ。捻挫すらしたことない人生だったのに。


「降参するならいまのうちですよ先輩っ!」

「ぐぅ……誰がするか……」


 僕は腕で体を持ち上げ、何とか起き上がった。人間意外と頑丈だ。全身が既に痛くてしょうがないが、それでも想像より体が動く。一方的にやられているのに、僕も結構戦えるじゃないかと変な自信まで湧いてきたぞ。


「先輩~、無理しないほうがいいんじゃないですか?」

「大丈夫だよっ。来いっ」


 藤堂の煽りを僕は真正面から返した。彼女はやれやれと肩を竦めて、もう一度姿勢を低くする。


「苦しまないように、せめて瞬殺しますね」

「やれるもんなら……やってみろよ……」


 僕も手に力を込めた。さっきの炎への反応で、僕の推測は確信に変わっている。今度こそ彼女を倒せるはずだ。


「行きますよ……にやぁぁっっ!」

 藤堂が地面を蹴った。地鳴りが響き、彼女のいた場所が小さく抉れた。どうせ反応できないので、僕はもう彼女の姿を目で追っていない。その代わり、地鳴りと同時に呪文を唱える。


「"偽造の琥珀イミテーション・アンバー"っ」

 今度変化するのは左の中指だ。鉄のリングが琥珀へ変わり、地中深くの根っこへ魔力を伝える。強制的に成長させられた根は僕の周囲から飛び出し、藤堂を襲う。


「甘い甘いっ!」

 藤堂は攻撃を予期していたように、細かいステップで根の鞭をかわした。だがそれこそ僕の予期通りだ。


 僕は左手を振って根を操る。藤堂の顔のそばで根を振り子のように揺らすと、彼女の視線はそちらへつられる。


 やっぱりだ。虎をモチーフとする魔術領域、そして虎に近づく身体変化。その副作用で、彼女の思考回路や反応形態まで「虎っぽく」なっている。もっと言えば「猫っぽく」だ。猫じゃらしにつられる飼い猫のように、彼女の視線は本能的に僕から逸れていく。


 視線が逸れたまま、体だけが僕へ向かって突っ込んでくる。攻撃本能は止められない。

 いくら野生の勘でも、視界外からの攻撃には対応できまい。いまが好機だっ。


 アクアマリンの効力はまだ続いている。右腕を振って、四本の水流を手元に集める。こぶしを握って突き出すと、水流は槍のように尖って解き放たれた。


 水が暴れる音に気付いた藤堂がこちらを見た。目を見開いている。しまったという顔。だがもう遅い。水の槍は彼女の上半身を狙って一気に飛んでいく。こっちへ突き進んでくる藤堂のいまの勢いではかわすことはできない。


 彼女は腕を眼前で交差させた。防御姿勢だ。まぁいい。距離が離れたところを追撃しよう。崩れた体勢からの回避がそう何度もうまくいくとは思えない。


 藤堂の腕に水流が突き刺さる。突き刺さるといっても、肉を抉るほど鋭利にはしていない。体を吹き飛ばす程度だ。

 そのままぶっ飛べっ。


 が、藤堂は足を止めなかった。上半身が水流に押し返されているのに。下半身で前に進んでくる。その帰結として、彼女の姿勢はリンボーダンスのように体を弓なりに反らす格好となった。


 そのままフィギュアスケートのようにスライディングしてくるっ!?


「なっ……」

「にゃっ!」


 完全に背中を地面につけた藤堂は、その背中をバネにして跳ねた。脚をこっちへピンと伸ばして。ということは、彼女の脚は僕の顎へ吸い込まれるように突っ込んできて……。


「ぐへぇぇ!?」

 クリーンヒットした。僕の方が空中へぶっ飛んで一回転する。人生初のバク宙だった。


 時間間隔が伸びる。一瞬の出来事のはずなのに、まるで十分も空を飛んでいるようだった。走馬灯かよ。


 いや、これはかえってありがたい。考える時間があるということは、魔術を使う時間があるということ。リカバリーの機会はあるっ。

 空中には大気の魔術だ。使うべきはひとつしかない。


「“偽造のる……”」

 そこまで唱えて、はたと気づいた。

 今日はもう、ラピスラズリ使ってんじゃ……。

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