2話
現在、俺はお嬢様……ではなく、この家のメイドと攻防を行っている。
「いえ、結構ですから。」
「いえいえ、ご遠慮為さらずに。」
「いえいえいえ、お構い無く。」
「いえいえいえいえ、これもメイドの仕事ですから。」
俺とメイドさんが取り合っているものが何か。答えは俺の下着だ。下履き(使用済)だ。
メイドさんの主張としては、デスパイネの家の客人扱いになっている俺の衣類は業務の一環として洗濯を行いたいというものだ。理解はできる。だがそれを受け入れられるかといえば話は別である。
俺とて成人した男だ。百歩譲って上着やらならして貰っても良いが、流石に下着は恥ずかしい。孤児出身なので、洗濯くらいは俺とてできる。
と、互いの主張は噛み合わない。仕方ないね。
「お客様はメイドの仕事を取り上げようというのですか?」
「いや、だから下着以外なら妥協しますと言っているではないですか…!」
と、俺の下着を互いに端を握りしめ主張していたところ。お嬢様、来訪。
「アルフレド!顔を見にきま……。」
「「……。」」
部屋の中には俺の下着を持った俺とメイド。お嬢様は俺とメイドを交互に見て叫んだ。
「浮気ですの!?」
「いや、何でだよ!?」
突っ込みの間に、メイドにより俺の下着は回収された。やるな畜生。と、いうことで。叫ぶお嬢様にかくかくしかじかと経緯を説明した結果。
お嬢様は真顔で俺に宣うのであった。
「アルフレドの下着はその……先程ちらと見えたのですが、トランクスですの?私は嫌いじゃありませんわ。」
「気になるのそこなの?まあ、そうですけど。」
あとお嬢様、俺の下着をチェックしないでください。三枚セットのお安いやつで見られるのとても恥ずかしいですから。
「結婚したら肌触りのいいトランクスを贈りますわ!」
「頼むから下着から離れてくださいお嬢様!」
俺は絶叫して顔を手で覆った。お嬢様は大事なことなのだと主張している。何でだよ。たかが元一兵士の下着のスタイルの何が大事なんだよ。
俺は惚れた女に下着の話題を引っ張られながら羞恥に震えていた。お嬢様、お嬢様としても男性の下着の話題に興味津々なのはどうかと思いますよ。お嬢様。
といったことを、こんこんと説いた訳であるが。お嬢様はどや顔で俺に言った。
「私はアルフレドの下着だから興味があるのですわ!」
「名指ししないで!?」
一歩間違えば変態の発言ですよお嬢様。俺は泣いた。そしてどうせ見られるなら、もう少し庶民的に高い下着にしとくべきだったと後悔するのであった。
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