閑話:王太子のその後
わからない。訳が分からない。
どうして自分はこの北の塔に幽閉されているのだろうか。
フラヴィアを幽閉していた時にはふきっ晒しだった窓には鉄格子がついている。突貫で作ったと言われた時には、父でなければ殴ってやろうかと思ったほどだ。
処刑の日の朝、受けた報告はデスパイネ家の令嬢が逃げ出したとのこと。
即座に追跡するよう命じるが、先に国家転覆罪のデスパイネの家の家長とそれに連なる者を処刑すべきだという宰相らの諫言により、其方を優先しようと手配していたところの隣国からの宣戦布告である。其れに応対していた時に両親の帰国が重なった。
結果。私は今。婚約者である愛しい人とは別の場所で。このベッドと椅子と机しかない見すぼらしい石畳の部屋で幽閉されている。
自分が何を悪いことをしたというのだ。悪辣な元婚約者と婚約破棄をして、私を支えてくれた愛しく優しい娘と再度婚約し、元婚約者の家族が国家転覆罪で婚約者含めた一族郎党処刑されることになった。それだけではないか。
自分はそれを主張するが、たった1人つけられた見張りの兵士は何も言わない。唯欠伸をしているだけだ。ああ、あの赤毛め小憎らしい。
夜にやってくる見張りも、自分に冷たい目を向けるだけだ。
己は王子だ。王太子だ。ゆくゆくはこの国の王となるのだ。
その己に不敬な態度をとってよいと思うのか。
主張すれど、見張りの兵士はそれに反応することはなく、日々は過ぎ去る。
――1日、2日……20日、21日……
「なぁ、悪かった。何でもする。だからもうここから出してくれ。」
日々、粗食と風呂にすら入れぬ生活。誰も話しかけてこず、会いにも来ぬ生活。
己の婚約者はどうなった?あの逃げた元婚約者は?何も情報はない。己は唯、幽閉されている。耐えられない。どうして、なんで、こんな。
「聞いているのか、おい!」
「わるかったって、頼むから」
「貴様など命令すればすぐに首なのだぞ。」
「なぁ、だから話をしろ。命令だ、なあってば……。」
結局塔から出されたのはきっかり30日後。その後王太子の再教育が行われたという。
その後の王太子に寄り添うのは、国王夫妻が決めた『新しい婚約者』なのだそうな。王太子が愛した『婚約者』は。
さて、どうなったのやら。
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