第2話 突然の来訪者
チリ~ンチリ~ン
誰かがドアを開けたらしい。
ギィイイ~っと言う渋い重い音と共に、軽やかな鈴の音が鳴る。
ソラ・ルデ・ビアスの書架の構造は中2階を挟んだ3階建てで、中2階は書架の本棚が壁までびっしりと埋め込まれている吹き抜けの階になっている。
セレスとミカゲは、特に客が来ない時はこの中2階の吹き抜けの、1階が望めるテラスの様になっている所のテーブル席で、お茶を飲みながらくつろぐのが日課になっていた。
「いらっしゃいませ~」
この、何者かがソラ・ルデ・ビアスの書架にやって来る事を随分前から気付いていたミカゲが、中2階に続く階段から降りて応対する。
お客は?と言うと、
「はぁ、はぁ、・・・・すみません・・・」
と言いながら、近くにあった小さなテーブル席の椅子に座った。
肩を大きく上下させながら、ほぼ息切れ状態の呼吸を落ち着かせようとするが、なかなか収まらない。
ようやく呼吸が整って来た頃に、
「お疲れですね~、このお茶、急激に身体を冷やすのでゆっくり飲むと良き!」
ミカゲがにこやかに客人にお茶を渡す。
どうやら、魔法がかかっているお茶の様で、急激に熱くなった身体をクールダウンする効果があるらしい。
「お、お気遣い・・・あ、ありがとうご・・・・ざいます・・・」
客人はミカゲからお茶の入ったコップを受け取ると、ゆっくりと喉に流し込んだ。
ゆっくりと~けど多めに飲んでしまったのか、急に寒くなってしまった様で身体がガクガク震え出したのを見かねたミカゲは、
「ああ、もう少し少なめに飲んでって言うのを忘れたち」
と言いながら、今度は小さな炎の入ったランプを客人に渡す。
「それ、しばらくの間だけ暖かいから持っていると良き!」
「あ、重ね重ね、大変ありがとうございます、では」
と言って受け取った。
じんわりと客人の身体を暖める小さな炎は、心の奥まで癒してくれる様な感覚を与えてくれるものだった。
客人はコレットと名乗った。
何でも、普段はこの国の王の第三王女の私設警備兵の魔導士だそうで、そこそこ良い家の出身らしい。
年齢は17歳と言っている。
風貌は、金髪に碧眼のよくある人間の見た目をしている人間だった。
「私は水魔法が得意なので、炎魔法を扱える人は全員尊敬です!
と、目を輝かせながらミカゲを見ていると、
「あちしは人間じゃないけどな!」
そう言って、自分の頭に生える角を触りながらミカゲは笑った。
「私は人間とか亜人とか、特に気にしてないと言うか全然気にならない人なので!」
コレットはそう言って、ミカゲの角を眩しそうに眺めている。
そんな会話が展開されている中、ようやくセレスが中2階のテーブル席から降りて来た。
どうやらうたた寝をしていたらしい。
ちょっと眠そうな目を擦りながら軽く会釈をして、いらっしゃいとコレットに声をかけた。
「お嬢さん~コレットと言ったね、こんなにボロい書架に一体何の用件だい?」
セレスは挨拶も程々に、一番重要な所を突いた。
金髪の、それなりに強い魔力を持っている魔導士が、何故?息を切らせながらこんな所に駆け込んできた理由を、セレスは知らなければならなかった。
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