ソラ・ルデ・ビアスの書架

梢瓏

第一章 ライカンスロープとの決戦

第1話 プロ・ローグ

 ほんの100年位前に滅んだ国の跡地に、今は本当に小さくてやっとこ国を運営している様な状態の国が出来ている。


その国の名はメルヴィ・メルヴィレッジ。

メルヴィ族と呼ばれる亜人が中心で運営している国だ。


国の首都はそこそこ栄えていて、人間よりも亜人や竜人などの種族が国の人口の主となっている。

人間以外の種族が多いので、亜人を迫害している国から逃れてきた者が、日々国境近くの門に集まって来ている様な状態だった。


 この国の中心部の隣にある、かつては栄えていたであろう?と思われる街の、これまたかつては栄えていた筈の商店街は既に寂れ、日中でも閑散としている事の多い状況になっていた。


閑散としている商店街の裏路地を入って行った先にある、日中でも陽射しが届かない様な薄暗い通りの奥に、ソラ・ルデ・ビアスの書架と呼ばれる書架がある。


書架とは名ばかりで、基本的に普段は魔導書や歴史書などの古書を販売している小さな古本屋だ。


 ソラ・ルデ・ビアスの書架の主人はセレスと言って女性で、この辺ではあまり見かけない赤い髪をしている。

目の色は緑色で、じっくりと覗いて見ると時々金色の光が渦巻いているのが見えると言うが、そんなに他人の瞳を間近で覗く輩は居ないので、この話は見た事がある人から聞いた話なのだろう。


種族は人間?

いや、人間とも言い難い微妙な雰囲気を醸し出しているので、何かの亜人とのハーフの様なのかも知れないと多くの人は思っている様だった。


 ソラ・ルデ・ビアスの書架は基本的には古本屋だが、セレスに言わせると実は魔道具屋でもあるらしい。

理由は、セレス自身が魔道具を作る魔道具師だったりする所から来ている様で、それで書架だけど魔道具屋と言う事になるらしかった。


 セレスにはいつも付き従っている従者の様な、店員の様な~居候の様な相棒の様な?そんな存在が居た。

その存在の名はミカゲ。


 青い短めの髪に曲がりくねった大きな角を生やしている亜人の少女で、目の色は髪の色に反して燃える様な赤い色をしている。


背丈は割と小さめで、年齢は13歳位に見える。


そして、ちょっとどこの出身か分からない訛った様な言葉遣いをするのが特徴的だ。


 人懐っこい性格なのに洞察力が非常に高く、視力等々の感覚器官が優れているのか?遠くの方からやってくるお客の足音だけで状況を判断するのが得意らしい。


何にせよ、ミカゲは敵には回したくない存在?の様な気がすると、書架でミカゲに会った事のある人の多くがそう呟いていた。


 この書架では、お客と呼べる人が来るのはせいぜい月に2~3人がやっとなので、今日も今日とて暇を持て余す日々の1日を過ごしていた。


日が陰り、空が少し赤らんで店じまいする時間が近づく。

そうして今日もまた、何も無い平穏で平和な、お客が来ない1日が終わる筈だった。


筈だったのだ。


その時までは。

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