里親
勝利だギューちゃん
第1話
「やあ、元気」
女の子に声をかけられる。
優しく微笑んでいる。
上から下まで、その子を見る。
誰だろう?
名前が出てこない。
なので、正直に言葉にした。
「誰だっけ?」
僕は女の子が驚くかと思ったが、表情ひとつ変えない。
やはり、よくあるいたずらか・・・
「そっか、この姿で会うのは初めてだよね、パパ」
「パパ?」
僕はまだ、未成年。
結婚していないし、彼女もいない。
眼の前の少女は、僕と同い年くらい。
年齢的に、娘という事はない。
「じゃあ、正体を見せるね」
女の子は、ウインクすると、くるっと回る。
すると・・・
「あっ1」
僕は、驚きの声を上げた。
「思い出した?パパ」
「思い出すどころか・・・」
そこには、一頭の蝶のぬいぐるみがいた。
パピミといい、僕がデザインしたものだ。
いくつか作ってもらい、そのうちのいくつかを里親に出した。
まさか、そのひとつが、この近くにいたとは・・・
「でも、どうして人間の姿に?」
「私の里親が、私を人間に変身させる小説を書いてね。そのせいかな・・・」
「そうか・・・」
パピミは続けた。
「でね、パパを見つけたから、驚かそうと思って」
いたずらっぽく微笑む。
これも、里親の影響か?
「なあ」
「何?パパ」
「俺の事、恨んでないか?」
「どうして?」
不思議そうに微笑む。
「パパは、素敵なことをしたんだよ」
「素敵なこと?」
「パパが里親に出してくれたおかげで、私はたくさんの出会いがあった」
「たくさんの出会い?」
パピミは続ける。
「あのまま、パパのところにいたら、世界を知ることはなかった・・・だから・・・」
「だから?」
パピミはまた、女の子の姿に戻る。
「まだ、パパのところにいる私の姉妹たちも、はやく羽ばたかせてあげて」
それだけ言うと、軽くハグをして、去っていった。
「いいところに、もらわれたな・・・」
僕は、里親の感謝をした。
会ったことはないが、きっと素敵な人だろう。
里親 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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