第10話
私は変わるんだ。
今まで何度「頑張らない」を続けてきたんだ。嫌なものから目を背けてきたんだ。
頑張らない事って、簡単だ。だけど、悲しい。それは、いつだって努力している人の一歩後ろにいて、その背中を見続けなければいけないからだ。
最初の告白は失敗してしまったし、終わりの見えている恋だけど、だからこそきちんと終わらせられるかが今の私にとって大切だ。そうすれば、きっとこのもやもやした気持ちが晴れるに違いない。
「何だよ、このめちゃくちゃな契約書は」
放課後、川西大我と鈴の音で例の契約について詳しく話し合うことにした。
「うん、それ契約書だからサインして」
「答えになってないっつーの。何でわざわざ紙に書く必要があるんだ」
「だって、書面じゃないと相手がバックれた時お互い困るでしょ?さ、サインして」
契約書の内容はこうだ。
一つ、成仏と失恋の成功に向けてお互い協力すること。
二つ、必ず失恋が完全に終了してから成仏させること。そうでないと、失恋の決着がつかないまま終わる為。
三つ、私、松崎あいりの鈴の音来店時には全メニュータダにすること。
四つ、私の言う事を全部聞くこと。
「いや、ふざけんなよ!四つ目おかしいだろ!何だよ、言う事を全部聞くって。もう成仏も告白も関係なくなってるじゃねーか!俺はお前の奴隷になりたくてお前にたのんだわけでもないし、協力するって言ったわけでもないんだぞ!」
「とりあえず、もうこの協力だの何だのって話は面倒臭いから全部なしな。自分でなんとかする。お前にたのんだ俺が馬鹿だった」
「あのさ」
「何だよ」
「いや、何でもない。もう帰る」
「待てよ!食ったんだから金払えよ!」
実は、あれから一度も6時5分のバスに乗れていないことを、川西大我に言えなかった。
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