第9話
暫く無言で私たちは歩き続けた。
俯いたまま歩き続けた。
5分くらい経ってから、ようやく川西大我が口を開いた。
「あと10分くらいしたら着くと思う」
「うん」
「あのさ」
「何?」
「今更だけど、お前何ていうの?」
「あー、言ってなかったっけ。私は松崎あいり。高校1年生。あんた3年だっけ」
「そうだけど。てか、お前歳上な事分かってた上でタメ口だったのかよ。生意気な奴だな」
「そうだけど」
「で?」
「で?って、何が」
「本当は他に何か言いたいことあるんでしょ。北斗くんのこととか」
何となく、川西大我が申し訳なさそうな顔をしているのを空気で感じた。
「もういいよ。まあ、ちょっと呆気なさ過ぎて自分でもびっくりしちゃったけど。でも、誰のせいでもないし。たとえ北斗くんが生きていたとしても、上手くいっていたとは到底思えないし」
「蒸し返してしまって、悪いな」
「その、、、協力して欲しいんだ」
「何の?」
「成仏だよ。ほら、よく言うじゃん。幽霊は未練があるから現世に残るんだって。北斗だって、何か未練があったんじゃないかって思うんだ。だから、あいつの未練を晴らすのに協力して欲しい。その方があいつにとって幸せかなって。多分あいつが見えるのって、俺とお前だけだろ。たのむ」
「すまん、お前は失恋したばっかだっていうのに、悪かった、、、忘れてくれ」
「分かった」
「、、、意外とあっさりしてるんだな。本当にいいのか?」
「うん、いいよ」
「その代わり、私が行く時は鈴の音の全メニュータダにして」
「やっぱお前って、そういう所あるよな」
「当たり前でしょ、人に物をたのむんだから」
「それから」
「まだあるのかよ」
「最後に、やっぱり告白だけしたい。ちゃんと終わらせたい」
「分かったよ。俺の無理なお願いを聞いてくれるんだから、出来るだけお前に協力する」
「ありがとう。じゃあ、今日からタダ飯いただきまーす!」
「おい、調子乗るなよ!タダ飯はまだ保留だからな!」
こうして、私たちの契約は結ばれた。
北斗くんの成仏を手伝う代わりに、私の失恋のお手伝いをしてもらう。
そして、タダ飯付き!
全部、上手くいくといいな。
成仏も、失恋も。
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