第8話

神様、残酷過ぎやしませんか。


折角今日あった事、白崎北斗くんの存在ごと、全部忘れようとしていたのに。


「ただいま」


「おかえり。今日は早いな」


「おう」


「わりぃ、大我。ちょっと買い出し行ってきてくんねぇか。いつものオムライスの材料、いつもの2倍の分量で」


「はあ?何かあるのかよ」


「最近お客さん多くて、いつもの分量じゃちょっと足りなくなってきてな」


「いや、ガラガラじゃ、、」


遮るようにおじさんは話した。


「まー、余ったら家で晩御飯に使うからいいの!」


「なんか知らないけど、分かった。行ってくる」


「あー、待った!」


「大我のお友達、これから時間あるかい?」


「え、私?いや、私友達なんかじゃないです」


今日初めて会ったばっかだし。


「おい、おやじ。あんま余計な事すんなよ」


「何だよ、折角大我の女の子の友達に初めて会えたっていうのに」


「はあ?友達じゃねーし」


「友達が1人も出来なかった大我に、まさか女の子のお友達が出来るなんて、、、お父さん感動しちゃう」


「おい、話聞けよ。友達の1人や2人はいただろ」


おじさんの表情が一瞬で変わった。

ような気がした。


「ああ、そうだな」


おじさんは、私の目を見て話しかけてきた。


「時間あったらで良いからさ、代わりに大我と一緒に買い物付き合ってもらってもいいかな?1人で持ちきれない量だからさ。手伝ってあげてよ〜。その代わり今日、奢りでいいからさっ。奢りで」


えっ、奢り?!

セールとか、お得なものに目がない私。

そんなおいしい話飛びつくに決まってる!


「はい、行かせて頂きます!!」


「おい。現金な奴だな。行くならとっとと行くぞ」


「待って」


「あ?」


「クリームソーダ飲み終わってからでもいい?残して行けないし」


「ったく、しょうがねぇな」


「ありがとうね。大我、待っててあげな。替えのスプーン持ってくるね」


「あっ、いえ!大丈夫です!ストローあるので」


「そっか。欲しくなったらいつでも言ってね」



とは言ってみたものの。

完全に勢い任せの口からでまかせで、アイスを全て食べ終わってからソーダを飲むのが私のルーティーンだった。

もうほとんどアイスは溶けてしまっているけど。

断ってしまった手前、もう一度頼みづらい。


よし。

今こそ、大きな一歩を踏み出す時だ。


私は一気にストローでアイスを混ぜ、勢いよく吸い上げた。


なるほど。癖になるとは、このことか。


勇気を出した後は成功しても失敗しても、必ず達成感とかいう気持ちのいいものが付いてくるのに、毎回それを忘れてしまう。


りっちゃんのあの言葉が、急にフラッシュバックしたんだ。


「でもね、一歩踏み出さない奴には幸福は訪れないよ〜」























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