第7話

こんなことあるのかって、思った。

1日中、何も手につかなかった。


でも、何だか家に帰りたくない、そんな日だった。


帰宅途中、バス停を1つ前の駅で降りてみた。

いや、正確には少しの意志を持って、気付いたら降りていた。

何も考えずにフラフラ歩いていると、

目の前にお店があった。

カフェ 鈴の音?

古びた看板。


ドアを開けた瞬間、カランカランと涼しげな鈴の音がした。一気に季節は初夏になったような気がした。まだ寒いけど。


「いらっしゃいませ」


お店の奥から、おじさんが出てきた。


店内は年季が入っているようだが、レトロながらも清潔感がある。全体的に木目調のデザインになっていて、開放感がある。

人間に例えると、いい感じに歳を重ねたイケてるおじさんって感じ。

落ち着く。


「どうぞ、こちらがメニューです。ゆっくりしていって下さいね」


おじさんは優しく微笑んだ。


色々あって迷ったけど、今日みたいな日は大好物のクリームソーダが飲みたくなった。


「あの、すみません。クリームソーダお願いします」


「はいよ〜」


暫くすると、目の前には大きなクリームソーダが。可愛らしく、ちょこんとさくらんぼが乗っている。


ひと口。そして、またひと口。

今考えれば、あの時私はスプーンでアイスをすくいながら、必死に自分の気持ちをごまかしていたのかもしれない。


カランカラン


誰かが入ってきた。私は思わず入口の方に視線を向けた。


「えっ、何であんたがこのお店に?!」


「何って、ここ俺ん家なんだけど、、、」


カラカラカラ


私の手からスプーンが転がり落ちた。







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