第2話

バスに乗り込むと、いつもの席に、いつものように彼は座っていた。


サラッサラの癖の一切ない綺麗な茶髪

夜空の輝きを一斉に詰め込んだかのような大きな瞳

透き通った純白の肌


美少年


その言葉は彼の為にあるようなものだ。

イケメンなんて、簡単な言葉で表すのはもったいないくらいの美しさだ。


思えば、いつからだったんだろう。

彼と同じバスに乗ることがもう日常になっていた。

気づけば、いつも同じバスに乗っていた。

たまに私が一本早い電車に乗ってしまっても彼と同じバスだったりする。

これって運命かな。なんちゃって。


通学や通勤でいつも一緒になる人の事を何となく覚えてしまう事って、よくあることだと思う。


だけど、私はちがう。

意識的に覚えようとしている。

というか、正確には、覚えてしまった。


突然、目の中に飛び込んできたんだ。

そんな存在。


あの制服、きっとK高だろうな。

K高といったら、都立の中では難関校で有名だ。

私には到底手の届かないような高校。

あんなに綺麗で頭も良くて、きっと学校ではモテモテなんだろうなーー。


私は彼よりも先にバスを降りる。

かなり乗り物には弱くて、車酔いしがちな私だけど、朝はもっとバスに乗っていたいなって思っちゃう。

いつも、降りる時のドアのブザーが何だか切なく聞こえる。

気のせいだね。


そうこうしているうちに、最寄り駅まで着いた。


朝の駅構内って慌ただしい。

電車に駆け込もうとしている人にぶつかられて、何度地味に痛い思いをしたことか。

あれは地味な痛み。

満員電車もきらい。

だって、身動きがとれないからおじさんに臭い息をかけられてもずっと耐えなきゃいけないから。


電車から降りて、長い長い坂道をのぼると、うちの学校が見えてくる。


やっと2年A組の教室までたどり着いた。

今日もお疲れ様。

まだ1日始まったばっかだけどね。


「あいり。おはよう!」


りっちゃんだ。

りっちゃんは、いつも私が寝ていた授業のノートを見せてくれるし、試験範囲もテスト前に必ず教えてくれたりする。

普段からだらしない私にも本当に優しい友達だ。

誤解されたくないから言っておくけど、その為の友達とかではない。

間違いなく、深い友情の上で私たちの関係性は成り立っている。


「りっちゃんー!おはよう!」

「どう?今日も例のイケメンには会えましたか?笑」

「だから、イケメンじゃなくて美少年だってば!!!」

「どっちでも一緒じゃんかよ〜」


(キーンコンカーンコーン)


担任が教室に入ってきた。

「あっ、先生きた!あいりまた後でね〜!」

「うん」


げっ、今日絶対朝テストの日だ。先生が茶色い大きい袋持ってるもん、、、。


「おーい、テスト始めるぞー。」


嫌な予感、的中。



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