第5話 ふせんの勘

「あーあ、絶対そうだと思ったのになぁ」

 ふせんはガックリとした様子で呟いた。というのも、主様の恋というのは勘違いだったようなのだ。まったく、お騒がせなやつである。

 しばらく恋についての話題ばかりだったのが、今はすっかり静かである。夜というのもあるだろうが。

「といういか、主様の恋は、どこ情報だったんだ?」

「それは企業秘密ですから!!」

 うなだれていた顔をばっと上げて答える。

「じゃあ、勘違いだったっていうのも……」

「企業秘密ですから!!っと言いたいけど、騒がせちゃったからね。答えるよ!!」

 寝ている仲間もいるから、ひっそりと話し始めた。

 要約すると、主様と、その恋の相手だと勘違いしていた人が話していたとき、りささんが「二人付き合ってるの?」と聞いたら、二人とも笑いながら違う違うって言ったそうだ。

「でも違うって嘘かもしれないとか」

「いや、あの感じは本当に違う感じだった!」

「勘……?」

「勘!」

 はぁ……。

「ちょっとため息やめてよー!」

「え、声に出てた?」

「勘!」

「勘、かぁ……」

 案外当たるのか……?

「もちのろん!」

「え……?」

「え、声にでて……か、勘!」

「いや声に出てたんだろ」

 やっぱり頼りにならないかもしれない。

「そういえば主様たちのその会話、僕は聞いてない……」

 というか、主様たちが近くにいない限り、そんなに聞こえてこないんだよな。ほとんど外にいる僕が聞いていないとしたら、机から離れた所で主様は話していたということになるか。それか単に聞いてなかったか。

「私、地獄耳だからね!ゆずちゃんがどんな話をしてるかは丸聞こえだよ!」

 ふせんは自信満々に答える。これがどや顔というやつだろう。

「でもなんだか申し訳ないなぁ。皆盛り上がってたから」

 すこし、申し訳なさそうな顔である。

「こんなに大はしゃぎしたのは、主様に友達ができた時以来だな」

「あ、里紗ちゃんの時ね!!あの時も、皆で盛り上がったよね!!」

 あの時は、皆で夜に宴を開いてたものだ。エアー乾杯して。朝まで騒いだものもいるようだ。僕は途中で寝てしまったが。次の日の仕事に支障をきたすかもしれないからな。

「あの時も、ふせんが皆に知らせてくれたんだったな」

「実は、目を付けてたのだよ!!柚ちゃんは仁科でしょ、里紗ちゃんは内藤だから、席前後だったからね。今は違うけど」

 そういえば。でも、話しかけたのってどっちからか、実際には聞いてないんだよな。とにかく友達ができたっていうのが嬉しすぎて。

「話しかけたのは、里紗ちゃんからだったんだよ」

 これも勘か?いや、もう放っておこう。

「放っておくなよ!!もう〜〜!!」

 頬を膨らませている。なんだか申し訳な……。

「ま、いいや!入学式で体育館に行くときに、教室前で里紗ちゃんから話しかけたんだよね〜〜。その後、一緒にご飯食べたり、部活見学行ったり」

 僕の申し訳ないと思った気持ちを返せ。ていうか、教室前の会話まで聞こえるのか。本当に地獄耳。気をつけよ。

「次のニュースは、マジのを持ってきて、また宴が出来るといいなぁ!!」

 次はどんなニュースが来るかな。良いニュースだと良いな。

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