下山

 血生臭い旅路も、これにて一旦の休息となった。

 幸いにも竜とは出会わず、わずか二〇日で山と雪原を踏破。

 下山し、ふもとの集落までたどり着いたのだった。

 ゼロ国は古くはイェードを含め、北の民とも交流自体はあり、言葉は通じていた。

 突然の大量の下山者を見て、何者かと思われていることだろう。

 最初の接近。最も緊張する場面だ。

 集落の規模は、二千人は住めそうな広さがあり、下山途中から確認できていた。

 集落を守る警備の者に、恐る恐る集落の頑丈な木造りの家から顔を出している、様々な年齢の者たちに向けて、イェードが丁寧に話しかける。

「我らはゼロ国の使いの者たちだ。

 話がしたい。そちら側から暴力を振るわない限り、こちらも武器は使わない」

 そう言って、イェードは雪の上にファングボーンを突き入れた。

 しばらくの間動きがないが、じっくり待つことにした。

 壮年の男が何やら中で話している。

 出てきた男の腰には武器を差していたが、引き抜く様子はない。

 イェードも気がついたように腰に撒いた骨製の剣を外し、さやごと雪原に放り捨てた。

 男が口を開く。

「我々は歓迎する力を持ちませんが、道案内程度ならできます。どうぞ、村の中へ」

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