進路

 流石に天龍てんりゅう、テンペストまでは出てこなかったが、山は一般的なドラゴンの生息区域でもある。

 縄張なわばりに踏み込んだら、即座の戦闘を覚悟しなければならない。

 イェードはアザトと相談して、遠征隊えんせいたいの進路を決めることにした。

「戦いには備えるが、道は最も移動しやすいものが良い」

 アザト国王は、竜との遭遇は不可避ふかひと踏んでいるようだった。

「竜には、巨弓もあまり効かないらしいな」それだけが不安事項らしかった。

剛力ごうりきの者がたくさんいるから、問題はあまりない。自分も含め、お任せを」

「任せるよ、竜殺しのイェード将軍」

 茶化すわけでもなく、アザトはイェードの胸を叩いてきた。イェードも国王の胸に軽く触れて応じる。二人は良き友であった。

 その後の二週間は無事に旅を続けたが、備蓄びちくの食料がかなり減ってきたため、そそくさと逃げ回る草食獣を狩って食べるようになった。塩も忘れずに持ってきており、味付けは問題ない。

 また、今回の遠征では、象と呼ばれる巨大な牙と長い鼻を持つ大型の獣を見ることとなった。

半端はんぱに攻撃をすると、突進されるんじゃないのか?」

 とはアザトのべん

 イェードが、「一撃で脳天を仕留めます」とも言う。

 残忍とは言うまい。彼らも生きるために必死なのだ。

 巨弓で遠方から頭を射って仕留めた象を、専門の屠殺とさつ・解体師が何人もかかって解体する。

 完全に死んだことを確認し、黒光りする石のナイフで大きく首筋を切断、血抜きをして分厚い皮をいでいく。解体師たちも、厚手の布で手を覆って、怪我をしないようにと慎重しんちょうだった。

 一〇〇〇以上人が一度に食事をするには、それなりの量が必要だ。

 焼いた肉を持ち運ぶ余裕もあるので(すぐに凍るので保存が効く)、複数頭の象を仕留める。

 解体師には好きな部位を好きに食べるようにアザトが言い、彼らもまた、それに応じた。

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