開戦

 ゼロ国より南にはかなり大きな集落があり、数千の兵士、更に多くの奴隷どれい兵士が存在した。

 もともと盗賊とうぞくのような暮らしをしていた荒くれ者が拠点きょてんを構えたもので、多数の奴隷を強引に使って一部の者が豊かな暮らしをしており、他のものは十五か二十歳を超えられば良いというような暮らしという有り様だった。

 奴隷兵士はまだ食料を与えられるだけましだ、ということで志願者は多い。

 少しでも命令にそむけば殺されるが、それでも彼らは生き抜くために必死だった。

 前回の戦いでは、ゼロ国と名乗る集団と大きな戦いになった。

 殺される前の者がこう言った。『国長とイェード司令官が貴様らを完膚なきまでに葬る』、と。

 新しい戦いに備え、その者たちは北側に兵士を配置した。

 数で押すことはできたその集落だったが、ゼロ国は強大な集落であることがうかがい知れた。武器も洗練されているし、特に回収した大きな弓の武器は最後まで凶悪な振る舞いを見せた。

 その集落の主な得物は弓にやりだった。

 弓はともかく、槍は尖らせた石や猛獣もうじゅうの骨を加工して作った刃先を、木にくくり付けていた。

 槍は非常に長く、人の二倍ほどあり、三角形の陣形を複数個組んで戦争を行った。

 皆が大きな盾を持っており、弓による攻撃をある程度までは防ぐことも出来る。

 イェードが率いるのは五〇〇〇の兵士。

 うち、三分の一程度は巨弓きょきゅうを運ぶ兵士たちだ。

 照準がぶつからないように分散して配置されており、さらに全体の軍人としては弓兵、骨や牙を鋭く加工した小剣などを持たせている。

 イェードは生き残った者で話せる者を再びその集落に連れていき、五〇〇〇人で取り囲んだ。

 攻撃は、その盗賊まがいの集落が鹵獲ろかくした巨弓から発射された矢が最初だった。

 イェード軍の最前列の巨弓、その近くに刺さりゼロ国軍は大量の矢で返報へんぽうすることとなった。

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