不死身の怪物
その生き物は、
昼も夜も、お構いなしに活動する特殊な生態であり、その身体の形状から陸を素早く移動するのは苦手だが、泥中に穴を掘ってじっくりと時間をかけて狩りをする。
呼吸は頭の上にある呼吸孔で行い、運悪く頭上を通った獲物を、その多数ある足で捕まえて
村の者たちは、恐怖を込めてその怪物を『イモート』と呼んでいた。
その意味は『死なない』。すなわち『
長老いわく、その真っ黒な足はいくら攻撃し、切断しても、すぐに生えてくるというのだ。
村人たちはイモートについては足の部分しか知らなかったので、長い
にわかには信じがたい生物だが、見てみればわかるだろうとマルス隊は、
村から出てすぐのところで、大量の蔓のような肉、足が
危険を意識する、マルス隊一行だった。
「このままでは、村人たちが襲われて死ぬ。ここで倒すしかない」
村から出たマルスは、そう宣言する。
副長全員が
これが相手では、弓はまず当たらないので皆は牙などを加工したナイフや
すでにイモートは火の、その強い熱を獲物だと勘違いして、捕食態勢に入っていた。
だからこそ足が、大量に堀った穴に泥中の奥底から出ていたのだ。
暗視の子どもがいなければ、まず夜番の者が先に手早く捕食され、その後はゆっくりと村で寝ている者が
「これは腕? 足?
いや、なんでもいい、攻撃するぞ!」
イェードは考えをすぐに切り替えて、巨大な棍棒を振り回す。螺旋状に嵌め込まれた牙の刃が長い足を捕らえ、切断する。
切られた足は
イェードの勇者ぶりに
切られた足が戦闘中の最中にじわじわと伸びていき、ほぼ完全に修復されたのだ。
足の先からはまだ血が滴っているが、すでに『にょろにょろ』と
「
マルスが言葉にならないような言葉を発するが、まだ隊の戦意は
「根本はどこにある!?」
イェードはしかし、おいそれとは突っ込めない。
「よく見ろ、
班長の一人がそう言った。たしかにそうだ、イェードも続いて理解した。
「一度切ってしまえば、爪までは簡単には生えてこないようだな。
攻撃力を削げるわけだ!」
言って、さらにファングボーンを振ってもう一本の先端を切断する。
足はやはり同じ長さにまで回復するが、爪はなくなっていた。
時間をかければ爪までも再生するのかもしれないが。
先端の血が
足本体も、その筋力は相当強いものだった。
誰かの足が怪物の足に巻き取られ、その身体をひっくり返されて持ち上げられる。
その男が悲鳴と共に持ち上げられるが、イェードが自分のファングボーンを投げてその刃を引っ掛けるようにして、絡まった怪物の足を切断する。
捕食に運ばれつつある男は、濡れた泥の上に無傷で落下して、悲鳴を上げて他のものへと再び合流する。イェードも前転して、手早くファングボーンを回収した。
「これでは、キリが無い!」
マルスが苦しい声を上げる。
先端の尖った爪付きの足も危険だし、身体に巻き付く足の方も危険。存在全てが危険だった。
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