拠点

 彼らは狩りなどを手伝い、食料などを確保してからさらなる旅路を目指すことになった。

 大きな村の族長の了承りょうしょうを得て、彼らは狩猟に採集、果ては川で魚取りの手伝いをした。

 肉は塩に漬けて、よく天日てんぴされた干し肉をたくさん作り、保存食としているようだ。

 最初は戻ることのない旅に出ようかと思われたが、副長ふくおさのイェードと、その働きぶりから族長に近い立場のアザトがずいぶん友人として仲が良くなってしまった。

 族長が知る限り、最も大きな集落はこの集落そのものだという話だ。

 物々交換の交易がある村などをより強く繋ぐには、猛獣もうじゅうや魔法生物の駆除くじょが必要になる。

 マルス隊のおよそ半数の戦闘員に、屈強な村の男を引き連れ、塩の交換を行っているそれなりの大きさの村へと向かった。

 簡単だが重要な言葉を覚えて、会話による結びつきは強めている。

 いくつも村を経由して『海』から塩が運ばれて来るので、すぐに海へとは行けないのはイェードからすると残念だった。

 あれだけ肉などを美味うまくする塩がいくらでも取れる場所があり、海は湖とは比べ物にならないほどの『塩水の山々』のような場所だという。

 いくつもの山が連なる山岳地帯さんがくちたい山脈さんみゃくをイェードは知ってはいたが、当時の族長たちにより不吉な死の場所であるとされていたため、多く立ち入ったことはなかった。

 大地と水、どちらが世界には多いだろう、そんなことを思うイェードであった。

 想像力もほどほどに、マルス隊など一行が村へと向かう。

 鬱蒼うっそうとした湿地帯の森が移動先で、時折ときおりある、切られた巨木が移動経路の目印となる。

 ぬかるみにまらないよう、注意をして一行は進んだ。

 全身の長さが把握できない大きさの大蛇だいじゃが出て、村の男からの説明を受けて攻撃を行った。

 炎を吐いたりも毒持っていたりもしないが、みつかれればそれ以前に失血で死ぬだろう。

 大量に用意した矢が放たれる。

 害獣の即死を狙うため、合図で一斉に大蛇の頭を狙ったのだった。

 その作戦は功を奏し、無事頭に矢を受けた大蛇はしばらく動いてから、動かなくなった。

「これ、できる、食べる?」

 現地の言葉でイェードが村の青年に聞くと、

「やめる、やめる、」とあせったように、手振りも含めて青年が返事をした。

 どのみち、得物と交易用の食料品(主に新鮮ないのししの身体まるごとに、他の草食獣の脚部分、干し肉など)で手いっぱいなので、半分は冗談だった。半分は本気だったが。

 道に迷うのは一番恐れることなので、害獣駆除がいじゅうくじょを含めた探索たんさくは力を込めてはせずにまっすぐ歩き、一日の半分程度の時間で目的の村に到着した。

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