歓迎の宴(うたげ)

 『マルスおさの集団』、正確にはマルス長の隊は、余っていた食料をすべて大きな村に提供した。

 主に周辺で取れる肉などで、保存に困ったらしく、焼かれているものも多かった。

 そこで、珍しい交易の品を族長が提供することにした。

 それは『塩』だった。

 かなり遠くにある海の水を徹底的に加熱、蒸発させることでできるもので、焼いた肉にふりかけたり、水と根野菜、さらに生肉と共に煮込んだりして、たいそう美味しい料理ができる。

 より刺激的な『味』というものをもたらす、そのままに原始的ではあるが調味料だった。

 粘土を焼いてできた丸い鍋のようなかまで煮込み料理が振る舞われ、あるいはすでに焼かれている骨付きの鹿や猪の肉の脚に塩が振られて、再度焼かれて提供された。

 小型の黒い石――ひどく鋭い薄さで光沢がある――で肉が削り取られて、同じく薄い焼きものの大皿に乗せられて各人に行き渡した。

 塩は膨大な量を一度に仕入れているため、そこまで高価なものではない。塩塊えんかいを比較的大きめのかま焼きのれ物に入れて、入れて、マルス長に贈呈ぞうていすることにした。

 宴の席で、アザトと、ある少年が席を共にした。

 少年の名は、イェードと言った。

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