少女司祭、アルル

 族長の結婚ほどではないが、族内を上げての大規模な婚礼を終えた。

 若くしての結婚に、始めはゆううつさを隠せなかった少女のアルルだったが、アザトは変な発想が多いとは言え、基本的にはかなりの好青年であった。

 見かけも悪くない。

 アルルはまじなの家計に生まれ、先代を務めていた父が幼くして亡くなったあとは、呪いの仕事にしばらくの空白が生まれた。

 アルルの父は、狩りに関する占いなどをするよりは、響きの良い赤ん坊の名付けをしたりするのが仕事だった。それを、アルルが若くして引き継いだ。

 アザトほどではないものの、聡明そうめいな彼女は多方面の知識を得、特に人や物の名前をたくさん覚え、薬草などのせんじ方も習った。

 その後、司祭の仕事を継承した。

 始めはおっかなびっくりで不安も多かったが、その生真面目な真剣さは族内で評判となり、たくさんの子どもや大事な品物しなものの名付けを行った。

 アザトと結婚して少し経った日に、その巨大な村で大きな事件が起きた。

 武装した一〇〇人ほどの隊が、村と接触したのである。

 その大きさから、やや排他的な内部構造をしていた村だったが、見た目からして強そうな連中に、余計な刺激を加えたくはなかった。

 遠方の言葉にも詳しいアルルが呼ばれ、彼らの言葉をいくらか翻訳した。

 アルルとアザトに族長を、武装した村の男どもが幾重いくえにも囲んで護衛するなか、言葉が交わされた。

 やや北方なまりの言葉である。アルルとアザトは話し合いながら、言葉を何度か聞き返した。

 彼らは『マルス長の集団』というらしかった。

 さらに害意はないことを、自らの族長に伝える。

 余計な軋轢あつれきを生まないためにも、歓迎する意向を族長が伝えて、アルルたちがまた翻訳した。

 少なくとも、形だけは歓迎するのだろう。

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