Side-Somewhere
第45話 天地をめぐる愉快な旅路
出会えた人に、感謝と愛を。
世界のどこかに僕はいる。
今日も僕は船に乗って旅をしている。
賜った神器、ミスティルとフリングホルニを駆使して、一人気ままに旅をしている。
日々旅にして、旅を住処としている。
楽しい旅だ。愉快な旅だ。
旅をすればするほど、大切な友達が増えて行く。だからたった一人で旅をしていても、全然、寂しくはなかった。むしろ気楽でありがたい。次は誰に会えるかな、と心躍る気分になれる。
たまに実家に帰ることもできるし、空の欠片を使って友達と雑談をすることだってできる。
報告書を書くのもコツを掴んできたから、だんだんと楽しくなってきたところだ。元々僕は頭は悪くない方だから、言われたらちゃんと書き方を覚えることができた。
天を通じて異世界を行き来し、地を通じて異国間を行き来する。
故郷、東の果て、世界の中心、西の果て、生の国、死の国、それからもっと沢山の、東西南北上下左右色んな色んなところ。
そうして世界をめぐる僕の旅はぐるぐるぐるぐると続いていく。
色んなものを食べたり、見聞きしたり、書き留めたり、歌ったり踊ったり、色んな人と話してみたり、母さんに撫でられたり、一人でゆっくり読書をしたり、料理をしたり、報告書作りに悪戦苦闘したり。そうやって日々がのんびりゆったりぐるぐるめぐる。
幸せなことだ。とても、幸運で、ありがたいことだ。
沢山の人にお世話になっている。最初は僕はそうやって何もかも施してもらうことを申し訳なく思っていたけれど、だんだんとその気持ちも薄らいできた。
僕もまた彼らに対して何か大切なものを与えているのだと、徐々に理解できるようになってきたから。
それは目に見えるものではないことが多い。けれど、親しい友人として会いにいくこと、真心を持って接すること、それだけで、何か生まれるものが確実にあるのだ。
だから、後ろめたいなんて思う必要は無いのだ。
僕と僕の友達は、お互いがお互いに、かけがえのない存在なのだから。
僕は僕が決めたこと、望んだことを、後悔していない。だってこんなに楽しく人生を送ることができているのだから。生きるということができているのだから。
僕はこれからも、「何者でもない」そして「何者でもある」という僕だけのアイデンティティを、大切にしていきたいと思う。なろうと思えば何者にでもなれる、この素晴らしい特性を。
何より僕は、このニュートラルな立場を、自分の意思で選択した。だから……僕はもう、無力ではない。
僕は幸運な神の子であり、使命を帯びた御使であり、そして自由を有する人間であるのだ。
それはとても素敵なことなのだ。
──僕の天地をめぐる愉快な旅路は、これからも続いてゆく。ずっとずっと。僕の命が尽きる時まで。僕の半分になった魂に、寿命が来るまで。
旅の途中では困難にぶつかることもあるけれど、まあ、だいたい何とかなるので、何も心配はいらないのだった。
──「第9章 天地」おわり
──『天地をめぐる愉快な旅路』おわり
(註:おまけもありますよ!)
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