錆色の街(改)

錆色の街

極相の地に芽吹かば漏れ無く枯れゆく

今日も壁越しに誰か赤子の泣く声があっけなく消えゆく音がした


道逝く明日の亡霊

朝日昇る頃にゃ二、三

死体が這いたる怪小路


朝露が煤けた帽子を濡らす

オダマキの陰にとぐろを巻き睨め付ける冥を横目に

気味悪く澄んだ水溜りの中

酷く冷えた金貨片手に朝に焼かれるきみを見た


What happened? I do not know.

What happened? No one knows. It's natural. There is no street light in this city.

So don't ask. Do'nt know. Do'nt look. Not say.


そう、繰り返される日雇いの労も業も愛も快も罪もバイバイできやしないよ。

この街自体も餓飢達の価値も過ちも。

全て極相の陰と雨だれに覆われ掻き消され

草原をゆく羊たちにゃ永遠に無縁の故事。


炭鉱町坑道の重労働。

犇めく損得勘定のシルクハットは

僕ら消耗品と奇重品を交換しご満悦。

4、5人の死もマイナス四十五円の価値。

ずっと昔から変わらぬこれが常識。


渇いた帽子に売れ残りのパンを攫って

錆びついたワイシャツの袖で汚れを払って

違法建築の狭間で空を見る

明日はきっと雨が降る


くたばる今日の亡霊

夕日落つる頃にゃ、二、三

肢体が灰たる埋葬地


「ただいま」

冷たく錆びたドアノブを回し、

腐敗した酒気に身を溶かす。

きみは軋む床に沈む妹にそっと目を落とし、

次いで周期的な轟音に埃を落とす義父を視た。

朱に染まった酒瓶にルビンの壺は真っ二つに割れた。

この家にソファがあったということに、今更気が付いたのだろうか。

かれはずっと義父を見ていた。

そして静かに、足元を黒く濡らした。


極相を東に端へと行く

ネオンに夢想する向こうの世界

一生視界にも入らない苦い蜃気楼

せいぜいが

暖かいシャワーに熱いベッド

全部無料だと謳う慇懃無礼

Play!

pray....

儲けもんだろ






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る