第2話

きっかり3秒、僕は固まった。



そして、ヒヨコをそっと地面に降ろして……



逃げた。



後ろから「は、ちょ、おいお前!?」というヒヨコの声が聞こえてきたけど、無視。

いや、そもそもヒヨコが喋るわけがないんだし、幻聴だ幻聴。あんなヒヨコ僕は見てない。うん。



そう言い訳に近いことを心の中で言いながら、赤いポストがある角を曲がる。



その時だった。



ふと、何か強烈な違和感を感じて立ち止まる。

擬音で言うなら、ぐわん……とかそういうやつ。



上手く説明できないけど、これって。



「……何かが、変わった?」



そう呟いた、その瞬間。



突如、後ろから轟音が鳴り響いた。



反射的に後ろを振り返ると、道路を挟んだ向かいにあるタバコ屋が崩れていくのが見えた。



いや、あれはただ崩されたんじゃない。



「壊された」んだ。



それに気づいたのは、店の残骸から「何か」立ち上がってからだった。



その、「何か」は黒い異形だった。

大きさは3メートルほどだろうか。牛に似た見た目をしている。

光を吸い込むような黒い身体の中、目だけが赤く光っているのがやけに不気味に見えた。



つう、と背中に嫌な汗がつたう。

「これから逃げないとやばい」と、本能が告げている。

咄嗟に周囲に助けを求めようと、辺りを見渡した。



愕然とした。



人が、一人もいない。



斜め向かいのコンビニにも、少し離れたスーパーの中にも、目の前の横断歩道にも。



僕以外の人は、ただ一人として存在しなかった。



そんな馬鹿な、と思いつつも現実を変えることはできない。



混乱して焦る僕を、異形の相貌が捉える。



濁った赤い瞳と目が合った瞬間、咄嗟に近くにあった石を遠くに投げた。



異形の瞳が一瞬だけ僕から外れる。



その隙を見計らって、僕は異形の反対方向に走り出した。



「死にたくない」と、それだけを考えて。

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罪殺しのリベアラー 三色みかん @mafintbti

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