第1話
「ごめん
ちょっと日直あって一緒に帰れない!」
そう言って、頭を下げて来る目の前の男……
「別に日直くらい待つよ?」
どうせ家帰っても暇だし、と。僕……
「いやでもさ、なんか先生が運んで欲しいものあるらしくて。
残ってたら多分日向も手伝わされると思う」
「んじゃ隠れてる」
「おいおい」
友達との、軽口混じりのいつもの会話。
今朝の悪夢とは対照的なそれに、どこかほっとしている自分がいるのを感じる。
「まぁでも、そこまでして残る気はないからなぁ。
んじゃ、先帰ってるわ。バイバイ」
「またな〜」
ひらひらと手を振る夏目。
……直後に「おーい四宮ー」って先生の声が聞こえてきたから、多分この後仕事だろうな。頑張れ夏目。
「さて……と。残ってる人少ないし、今日は寄り道しないて帰るか」
ラーメン屋でも寄ろうかと思ってたけど、一人ってのも寂しいし。
いや、でも声かければ数人くらいは来そうだな。
部活がないので静かな校庭を横目に、校門に向かってスタスタと歩いていった。
校門を出て、角を曲がると小さい古本屋がある。
丁度そこを通りがかった、その時。
ひゅ、と軽い音を立てて、何かが僕の方に飛んで来る。
「うわっ……!」
咄嗟に受け止めて見てみると、それは。
「え……何これ。
ヒヨコ……の、ぬいぐるみ?」
目を閉じた、ふわふわとしたヒヨコのぬいぐるみがそこにあった。
薄い黄色とオレンジの嘴。丸くデフォルメされてるけど、これはどう見てもヒヨコだ。
なんだこれ……と思いながら、とりあえず握ったり軽く投げたりしながら持っていると。
ぱちり、とそのヒヨコの目が開いた。
そのせいで驚いて、思わず取り落としてしまい少し焦る。
すると。
何も触っていないのにヒヨコがコロンと立ち上がって、パッパと砂を払うように翼を動かした。
え、これこういうぬいぐるみ?まさか生きてるの?
びっくりして固まっている僕に向かってそのヒヨコは、
「おいお前!勝手にオレを握ったりするんじゃねぇ!」
僕の事をビシリと指差しながら、そう言い放った。
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