港町編3 竜と蝶

私が下りてみると。

黒い煙の奥から、一部分が人のようにも見える蝶の怪物と、足から血を流したリーチェがいる。


「リーチェ!大丈夫?」


「大丈夫ではないかな」


「アイリスはそこにいないの?」


炎の翼が、奥にいる、それに掠める。が風で炎が捻じ曲がり、本来期待していたような当たり方はしない。


「知らないかな、町にいるんじゃないかな」


だとしたら、こっちではなく、火事の方に関わっていたということでしょうか。


「ポーラちゃん!アイリスちゃんを探しに行ってくれないかな」


「そっちは、二人で大丈夫か?」


「レイナちゃんがいるから、大丈夫かな」


リーチェの私への信頼大きくないですか?結構相性悪い相手だと思いますけど……

まあ、そうは言ってもアイリスさんは心配ですか


「リーチェ、足は大丈夫?」


リーチェは黙ってうなずく。

私は呼吸を整えて、距離をはかる、一瞬で仕留めないと長時間飛行の分こちらが先にガス欠するでしょう。


「ドラゴンさん、文字通り最高火力じゃないと、あれは勝てないよ」


「分かっておる」


翼の大きさ自体は変わらないが、その威力は全く違うでしょう。

風が弱まる瞬間を探るが、そんなものはないとわかると飛び出します。

風の刃と炎の刃がぶつかり、捻じ曲がった炎は壁に当たる、当たった壁は溶けて暴風の中に飛散する。

私は風に飛ばされ壁に叩きつけられそうになるが、足から着地し反動をつけて、もう一度狙いを付け飛び出す。

リーチェも同じタイミングで走り出した。

目の前のそれは蝶のような羽を動かし飛び立つ。天井がある以上空へは行けないが、リーチェにとってその距離の差は大きい。

私は上昇するそれを叩き落そうと、炎の翼を振り下ろす。竜と蝶の翼がぶつかり合う、双方が天井と地面にそれぞれたたきつけられる。リーチェはこの瞬間に巨大な岩を取り寄せる。岩は重力に引かれそのまま、それの上に落ちる。

しかし、次の瞬間には、岩が砕け散る、だがそれは狙い通りだった、炎は翼から尾の形になる、私は形勢された尾を振り下ろす。風の刃を砕き、尾はそれにたたきつけられる、炎がさらに形を変えそれにまとわりつく、そしてそれは燃え尽きた。


「やったかな」


「そういうのはフラグとか言われるやつだからやめて」


「アイリスちゃんの方探しに行かないといけないかな」


「それはいいんだけど、ドラゴンさんが完全にエネルギー使い切っちゃてて、実体化はまず無理、羽もしばらく休めないと」


「どうやってこの部屋から出るのかな」


部屋を見たところかなりぐちゃぐちゃで少なくとも扉から出くことはできないような、崩れ方をしています。


「何か脱出できるものは無いの?」


「いまから探してみるから、ちょっと待っててくれないかな」


アイリスさんとポーラさん大丈夫ですかね。


「リーチェ、はしご見つかった?」


「ようやく見つけたかな」


そう言ってリーチェははしごを取り出し、私が開けた穴にはしごをかけます。いや、はしごではなく脚立ですねわずかに届いてないです。


「私が支えておくから、リーチェ先に上がって」


「分かった、上からロープでも降ろせばいいかな」


「ああ、うん、というか気になってたんだけど……」


「何がかな」


「その『かな』っていう語尾二人だけなんだからいらなくない?」


「普段から使っていた方がいざという時間違えないで済むだろ?」


「まあ、そうだけど……」


たしかに昔から一部の人以外にはあの口調で話していますが、なんでわざわざそんなことを……と私は言いたいです。まあ、ずっと堅苦しい話し方というのも息が詰まりそうですがね。

こうして、私達は手間取りながらもこの建物から出られました。


「今、誰か地下にいなかったか?」


「そんなことないと思うけど……」


リーチェに言われて穴を覗き込みますが誰もいません。


「気のせいじゃない?」


「そうだったのかな」


とりあえず宿に向かって歩き始めました。

町を見ると火は一通り消火されていました。水を使える魔法使いでもいたのでしょう。海も近いですし。

数分歩き、宿に着いたのは良いのですが、アイリスさんとポーラさんが見当たりません。まだ帰っていないのでしょうか?

二人を探したいのは山々ですが、ドラゴンさんの疲労の分も少し来ている気がします。こうして集中が切れたところで、私は気絶したように眠ってしまいました。

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