港町編2 運び屋と情報屋
私は暗い夜道を歩きながら、電話を取る、腕時計を見ると二時、寝静まった町は静かで不気味だ。
今回の送り先である。クライン家へと向かっているところだ。
電話を取り出し、いつもの奴へと連絡をする。
あいつと連絡する時だけは気が楽だ、少なくとも演技をしなくて良いのだからな、かなかな言わなくて済む。
「情報屋、聞きたいことがある」
「どうしたのかしら、リーチェ」
「名前では呼ぶな」
「ふふっ、相変わらずね運び屋さん」
「送り先のはずの、クライン家に誰もいないんだが、何か知っているか?」
「さあ?私は知らないわ」
「レベル二までの範囲なら金は払う、情報をとこせ」
私達は必要な情報の価格を十段階に分けている。レベル二は下から二番目、地元の人なら普通に暮らしていても、手に入れられる情報だ。たいした値段じゃない。
「そうね、クライン家のお嬢さんが事故で亡くなっているはずだわ、正確に言えば事故の直後は生きていたらしいけど……これ以上は別途料金になるわね、なにせお葬式は一部の親族だけで行われたのだからしょうがないわね」
「料金の範囲内で話せることは他にあるか?」
「そうね、宗教と何か関係があったそうよ」
「宗教と言えばナービス教か?」
ナービス教はこの辺りの地域に住んでいるなら誰でも知っている最大規模の宗教だ。
「いいえ、新興宗教のユグドラシルというところよ」
「そんなに喋っていいのか」
「そういう気分というだけよ、それと、あなたならおいしい情報を持って帰ってくれる気がするわ」
「後でそのユグドラシルとか言うのも知りたい、情報を整理しておいてくれ」
そう言って私は電話を切る。
面倒なことに巻き込まれたくは無いが、これが私の仕事である以上、仕方がない。
ようやく見えてきたな問題の場所が
とりあえず入ってみるしかないか。
私は今、館の前に立っているが、少なくとも鍵を使って入るつもりはないということだ。
ピッキングツールを無から取り出し、鍵を開ける。
少なくとも人が起きているようには思えない。
とりあえず懐中電灯のような物を取り出し、家の中を調べる。
この建物は、一階と二階があるようだが、それだけではない気がする。
やはり、可能性があるとすれば、地下があるぐらいか。
一階、二階には部屋が足りないなんてことは無かった。まあ、そんなミステリーじみたことを考えるつもりはない。
機械を使って場所を探し、床を壊すだけだ。
案外すぐに作業は終わった床にそれほどの厚みが無かったからだ。
下りた先は廊下のようだ。扉もいくつか見つかる。
地下には、月の光が届かない分暗いな。
いや、廊下の奥の方から光がわずかに漏れている。
灯りのある部屋は、床に魔法陣のようなものが描かれている。
部屋の隅には、血がついている、それもかなりの量だ、出血した人間はおそらく死んでいるだろう。
足音がする。その方向へ顔を向けると、そこにいたのは、人間と虫が混ざったような、確かに体の右半分は人間だが、左側には、蝶の羽のようなものがあり、体が正常なことには、なっていない。
「ここに住んでる住民かな?」
反応は、あった。
そう、私を殺そうとしている。
強風が吹き荒れる。私は咄嗟に壁を取り出し、風を防ぐ。
とにかく、廊下の奥へと逃げる。その際に爆弾を仕掛けながら。
凄まじい音と同時に壁に傷がついているおそらく風の刃のようなものだ。体を逸らして躱すが、足に風の刃が掠める。血が流れ落ちる、前回の洞窟なんかより、数倍は死にそうな状況だ。
ここで電話から、音が鳴る。
「リーチェ、今どこにいるの?」
その時、風の追撃が迫ってくる。
「例の依頼者の家だ!早く来い!襲われている!」
私はすぐ近くの扉に入り、扉の前に岩を置き、さらに爆弾を仕込む。
それにしてもここまでの事になるとはな、最悪演技がばれても問題はないが、あの話し方の方が人づきあいが楽だから面倒だな。
後何分ここで耐えれるのやら……
そう思っていると、数分もかからず扉は壊される、だが、それと同時に天井が切り裂かれる。
赤い髪に赤い翼を持った少女、レイナが下りてくる。
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