港町編1 海と火竜

気が付くと私はベッドで寝ていました。

いや、昨日食事の後で適当な宿屋で出会ったんでしたね。


「ドラゴンさん怪しい人が部屋に入って来たりとかないよね」


「今のところはないが、少し遅くまで右隣の部屋の音が続いていた、それくらいだ」


右隣と言えば、リーチェが泊まっていた部屋何かあったのでしょうか。後で尋ねてみてもいいかもしれませんね。


「変わったことは無かったってことでいい?」


「ああそうだ」


一応、夜や寝ている時はドラゴンさんに回りを監視させています。泥棒とか、暗殺とか怖いですからね。お陰様で昨日は変なタイミングで寝やがって死にかけましたが、結局あの日は足の痺れより、リーチェの車の方がつらかったんですよね。

時計を見ると、おおよそ六時くらいです。

もうすぐ旅立ちですね。

とりあえず部屋を出て、宿屋の入り口の辺りを見ます。

ポーラさんとアイリスさんはもう起きているみたいですね。何かを話しています。

まあ、別にどうでも良いですか。


「リーチェもう起きなよ」


扉をノックしながら声をかける。


「ごめんごめん、昨日はうまく寝付けなかったからかな、全然目が覚めなくて」


「早くしなよ、二人とも、もう待ってるから」


「すぐ準備終わらせるから」


本当にすぐ準備を終わらせてきました。茶色い髪はまだ少し寝ぐせのようなものが付いていますけど、こんなに早いということは、昨日何か音がしていたというのは、昨日の内に荷物をまとめていた、ということでしょうか、昨日もここに泊まっていたそうですし、おそらくはそうでしょう。


「それで、昨日リーチェが行きたい場所があるって言ってたけど、どこに行くつもり?」


「南の街に、運び屋の用事があって」


「私を足として使うつもり?」


「悪い言い方をしたら、そうなるかな」


そこ、言い切っちゃうんですね。


「そもそも、その港町って、ここからどれくらいで着くの」


「ここから歩けば、山とかもあるし二週間かからないくらいじゃないかな」


「ドラゴンなら一日だけど、私が酔わなければという前提条件での話ね」


「酔い止め薬を友人をもらってきたから飲んでくれないかな」


そう言って私に薬を渡してきます。それが白色とかならともかく、ピンクなのがどうも飲みたくなくなる要因です。

なんか最近こういうことが多い気がします。

まあ、飲みはしますけど。


「それと、言い忘れてたけど、最初の五分くらい腹痛がするから気を付けた方がいいんじゃないかな」


「リーチェ、後で覚えてろよ」


ということで、十分ほど苦しみました。

本当にリーチェは他人に関心がないという感じです。


「大丈夫だったかな」


「うるさい!」


とにかく、入り口の方にいる二人と合流して、港街に向かうことになりました。

ドラゴンの上に四人で乗って、大空へと飛び立ちます。

ドラゴンに乗って数時間、休憩をはさみながらもようやくたどり着きました。港町に着いた時刻は夕方、ほとんど落ちている太陽がまぶしいです。ここまで、十時間近く飛んだと思いましたが、私が酔っていないのを考えると例の薬の効果はちゃんとあったみたいです。二度と飲みたくないですが


「全員大丈夫?」


「ずっとドラゴンに乗るってのは思ったより疲れたぜ」


「私もですね、少し休憩したいです」


「私だけ仕事をこなしていくから、みんなは先に宿をとっておいてくれないかな」


「まあ、それでいいですか」


「我はもう寝るぞ」


「今日は酷使してごめんね、ドラゴンさん」


私達を下ろして、すぐにドラゴンさんはマントに変わって寝てしまいました。

まあ、町の中にいてドラゴンさんの力が必要になることはないでしょう。


「それじゃあ、レイナちゃんこれ持っておいてくれないかな」


そう言って私に四角い何かを渡します。


「リーチェ、これは何」


「トランシーバーみたいに考えていいかな、電話替わり使うってことで持っておいてくれないかな」


こんな物まで持っているとは、一体誰に作らせているんですかね。


「仕事終わったら連絡してよ」


リーチェは手を振って、目的地の方へ向かっていきます。


「私達も早く宿を見つけましょうかね」


「そうですね、どんなところにしたいとかありますか」


「私は特にないぜ」


「安くて十分綺麗だったらどこでもって感じで探そうか」


海沿いの道を歩きながら、宿を探したりしています。せっかくなら景色が良い所にしたいですね。それにしても海の臭いというのは、私はどうも好きになれませんね。船も苦手ですし。

その後数分ほど宿を探すと、それなりに良さそうな場所を見つけたのでそこに泊まることしました。

リーチェからの連絡はしばらくこないでしょうし散歩でもしますかね。


「おーい、レイナちゃん聞こえてる?」


いや、よくわからないタイミングでかかってきました。


「やけに早いけど、どうしたの?」


「受け取り人が昨日からいないみたいかな」


「こんな時期にどこに行くっていうんですかね」


「なんだか不思議じゃないかな」


「そういうのは明日やりましょう、私も疲れてるし」


「そうだね、今から場所を教えてくれないかな」


「わかった、まずは……


こうして、今日は何ごともなく終わるはずでした。

私がぐっすり眠っていると声が聞こえます。


「……きろ、起きろ小娘」


「ドラゴンさん、どうしたの」


「寝ぼけておらんで、自分で確認しろ」


どこかが焼ける臭い、この建物ではないでしょうが結構近いようです。

とにかく、まず三人を起こさないといけませんね。

ですけど、一つ想定外だったのはリーチェとアイリスさんがいないということでしょうか。

騒ぎを見て飛び出したとかでしょうか?それもなんだか不自然な気がしますけど……

面倒なことに巻き込まれていないことを祈りながら、二人を探すしかありませんね。

いや、電話があるんですから、すぐに分かりますか。


「リーチェ、今どこにいるの?」


「例の依頼者の家だ!早く来い!襲われている!」


そこで、電話は切れました。

とにかく何かまずいようなので、向かわないといけません。

依頼者というのは、おそらく運び屋の仕事のことでしょう。それならこの街に来た時にリーチェを近くに降ろしたのでだいたいの位置は知っています。


「ポーラさん、リーチェを助けにいきます」


「何があったんだぜ」


「リーチェが襲われているらしくて、とにかくドラゴンに乗って下さい」


マントがドラゴンに変わります。本来町の中でドラゴンを出すのはご法度ですが、緊急事態ならしょうがないでしょう。

二人でドラゴンに乗り、目的地へと向かいます。


「ここから先は寝ないでくださいよ、ドラゴンさん」


「今回は流石にまずいようだな」


「分かってるようで良かったです」


飛んでみて分かりましたが、いろいろな所で火が上がっています。

今は知らない人より、友人です。全員救ってはいられません。

そうして、すぐに見えてきました。目的地の屋敷が、貴族の屋敷らしく結構広いですね。


「リーチェは一体どこに?」


「とにかく探してみるしかないぜ」


玄関の扉は開いたままなので入って見ましたが、どこにいるのやら。

と思っていると爆発音が聞こえます。一階なのに下からです。おそらく地下室があるのでしょう。

階段を探している時間はないので、床を切っております。

そこで見たものは……


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