第1話 竜騎士とは?と問いたくなる話

私は竜騎士としてドラゴンに乗っていました。赤い髪をなびかせて悠々と空を飛んでいる、というわけではありませんが。


「ドラゴンさんもうちょっと揺れない飛び方してくれない?」


「なぜ我が貴様の指示を受けなければならない」


私はドラゴンに乗って乗り物酔いをしていました。まだ景色が見えて風に当たれる分他の乗り物よりかはましですが、それでも酔いやすい私にとっては結構苦しいです。


「小娘、貴様は本当に竜騎士なのか?」


「小娘じゃなくて、ちゃんと名前で呼んでよ」


「黙れ」


竜騎士になってから二週間、転生してから一か月経つというのにドラゴンと全然仲良くなれません。本当にこのままで大丈夫なのでしょうか。いや、今はそんなことよりも大切なことがありました。


「ドラゴンさん近くの町で下ろしてくれない」


「次の町まではこの速度だと十分ほどだ」


「ごめん、やっぱりすぐ下におろして、吐きそうだから」


「小娘、我の上で吐くではないぞ」


気分が悪くなりながら、周りを見ていると、白い服を着ている人が見えました。

そして、その周りには怪物がいました。見た限りそれはカマキリのような生物であり、大きな羽を持っている、色はコオロギのような茶色、体長は一メートル程、数もそれなりに居るので、虫嫌いが見たら絶叫するだろう。


「ドラゴンさん力を貸して」


「分かっておる」


その言葉と同時にドラゴンの体が炎に変わり、私の体にまとわりつく、炎は翼、尾、鎧とそれぞれの形を成していく、


「ドラゴンさん加速はほどほどにしといてよ」


炎の翼を広げると、一瞬の内に虫の近くまで駆け、翼が虫を切り裂く。

虫の群れの中心に居たのは少女だった。

少女は銀髪で身長は私より低い位なので百五十センチと少しといったところ、白の神官服を着ていて手には杖のような物が握られている。見たところ怪我はしていない。

私は少女怪我していないことを確認すると、虫の方に目を向ける。

そして次の瞬間に、正面にいる虫のほとんどは真っ二つに切断された。

炎の翼が揺らめく、焼け焦げたような臭いがする、これこそが私の竜騎士としての戦い方だ。

虫もこちらに鎌を振り上げてくるが、竜の力を借りている私にはかすりもしない。

虫たちは逃げ出そうと不気味な羽音を響かせ飛び立つ、私の翼もそれと同時に大きく揺れ動き、飛翔する。

炎の翼が広がる、そのまま全身を使って回転する、炎の翼は巨大な刃となり空中にいる虫を八つ裂きにする。

こうして一瞬の内に虫の群れは一匹も動かなくなった。

私はすぐにその場を離れようとするが、後ろから声をかけられる。


「すみません、あなたは誰ですか?」


少女はおびえたような表情をしながらも私に尋ねかける。


「私の名前はレイナ・クロス、竜騎士をやっている旅人です」


「あの、私はアイリス・イベールと言います。先程は助けて頂いただきありがとうございました」


「いえいえ、大したことはしていませんよ」


「何かお礼できることはありませんか」


「いえいえ、大じょ……」


「えっと、大丈夫ですか?」


オェェ、さっきの無理な動きのせいで酔いが酷くなったようで吐いてしまいました。


「体調も悪いようですし、近くの村まで送らせてもらいましょうか」


少女を助けたはずなのに少女に助けられるとは思いませんでしたが……


「そうさせてもらいます」


「村はここから歩いて三分くらいですね、ついてきてください」


私はアイリスについていきながら、小声でドラゴンに話しかけます。


「ドラゴンさん、これからはあんな無茶苦茶な動きしないでよ」


「我についてこれない貴様が悪いのだろう」


私のドラゴンは全く悪びれる様子はないようです。


こんなのと一緒にいて大丈夫なのか不安に思いながらも近くの村へ向かっていくのでした。

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