その十一【評価と成果?】
あの
あくまでその内容は瑞希が主軸になっていることに少し笑ってしまうけれど、それを聞いた生徒達の反応は様々なものだった。
怨嗟や絶望、嫉妬や憤怒などと言った負の感情をさらけ出す大半の男子。
もう男子を無意識に誑かされないためか、安堵の息を漏らす恋に積極的な女子。
男子はまあ気持ちはわからなくはないけど、
瑞希は女子からも親しまれていると思っていたけれど、多少なりとも恨まれてはいた……らしい。
それを聞いて、とても大事なことなのに、それを知らなかったことが少し悔しい気分になった。
瑞希から疎遠になっていたと言えど、もう少し瑞希の事を見ていればよかったのか……もう、遅い話だけれど。
……話を戻そう。先程の視線の他に、少し意味がわからないものがもう一つ。
何故だか俺と瑞希の関係を生暖かな視線で観察し、何も言わない一部生徒。
いや、上二つはともかく、これはどういった反応すればいいんだ……?
と、とりあえず……改めて瑞希の影響力が凄まじいことを思い知らされる。
さすがは瑞希、といったところだ。
釣り合い、という言葉が脳裏に来ないことは無いけど、それよりも誇らしい。自分は、そんな女の子と付き合えているのだ。
「──ぜえっ……はあっ……」
「上体起こしだけでこれかよ」
と、そんな感じで現実逃避をしながら荒れた呼吸を整えていたら、
少しだけ息が落ち着いてくると、俺は「うるさいな」と弱々しく拓也を睨む。
「仕方がないだろう。運動しだしたのはつい最近なんだからさ」
「普通運動してなくても上体起こし、それも12回でそこまで荒れるものなのか?」
荒れるものじゃないのか?と思って首を傾げると、盛大にため息を吐かれた。
「お前大丈夫か?この後も反復横跳びと握力測定、長座体前屈があるけどよ」
「長座は楽だからそれだけしたいな……」
このあとすぐ行われ反復横跳びを覚悟しようとすると、自然と遠い目になってしまう。
今俺は何をしているのかと言うと、まあ単刀直入に言うと体育の補習である。
前言っていたスポーツテストはできなくなったものの、その測定は点数になり成績に影響する。
だから、強制的に補習を受けなければならなかった。
で、長いこと休んでいたから当たり前だけど、補習が残っているのは俺だけだった。
で、親切心で拓也が付き合ってくれているという形だ。
「じゃあ立花、次反復横跳びな」
「……はい」
息が整ったのを見計らったのか、体育教師が反復横跳びができるエリアを指差す。
俺は絶望感に浸りながら、のそのそとそのエリアへと歩いていくのだった。
□
「えっと……しゅーくん、大丈夫?」
──すごく、なんか、疲れてる……?
無事?に補習が終わり、着替えてから。
待ってくれていた瑞希に駆け寄ると、俺を見るなり瑞希がそう尋ねてきた。
……まあ、瑞希の反応も無理はない。
俺の顔には吹いたものの汗が残り、息は上がっていて目は焦点があっていない。
……ああ、自分でもわかっている。
律儀に待ってくれていた誠実で可愛らしい彼女にこの姿、ダサすぎやしないだろうか。
「昨日と今日の朝、ウォーキングして少しはマシになったと思ってたんだけどな……」
制汗シートを取り出しながら、自分の情けなさに打ちひしがれる俺。
お察しの通り、この2日間の運動の成果は驚く程にでなかったのだ。
「昔から運動苦手だったもんね、しゅーくん」
そんな俺に、瑞希はドン引きすることもなくニコリと微笑んで昔の事を話し出す。
気遣っているわけではないと察知できたし、彼女の感想でなんとなく気が楽になる。
まあ、それに甘んじるつもりは無いけど。
「来年には、なんとか平均的になれるようにしないとな……」
「いいと思う、頑張って!」
──克服しようとする姿もカッコイイ!
基準が浅い気がしなくもないけれど、瑞希にそんな事を言われ……思われ?照れくさくもやる気が舞い上がって来る。
そう思った俺は「ありがとう」と言って、彼女の頭に手を乗せたのであった。
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