幕間【私の幼馴染】
私、
名前は
○
彼は、私が家族以外で唯一安心出来る男の子だった。最近夢に出てきたけど、初めて会ったのは幼稚園の入園式の日。
幼稚園の頃。その頃の私は元気な性格だったけれど、好きな物は読書やゲームとインドアのものだった。
だから、外で遊ぶことが多い幼稚園生だと友達との交流が上手くいかないでいた。
仲間はずれされたりもしたし、虐められたりもした。
でも、彼は違った。
しゅーくんは、自分もインドア派だった事もあるだろうけど、私とずっと仲良くしてくれた。虐めも助けてくれたことがあった。
そんな彼を、私は大好きだった。
恋愛?というのは興味が無いからよく分からないけど、ヒーローみたいで大好きだった。
□
それは二年経ち、小学生になってからも変わらなかった。
私は彼とずっと一緒にいて、彼は着いてくる私を嫌な顔ひとつせずに接してくれて……
家族ぐるみで仲が良くなっていたこともあって、家に遊びに行くのは日常だったし、一緒に旅行も行ったりした。
それは6年間ずっと続いて、私はそんな日常をとても幸せな気分で過ごしていた。
……だけど、あくまで学校外では。
学校では違った。
彼以外に、私は友達は一人もいなかった。その時から私は既に消極的な性格になっていたから、話しかけることが怖かった。
特段可愛くもないし、話しかけられることも少なかった。
だから私は、学校でもしゅーくんとずっと一緒にいた。
学校でも、やっぱりしゅーくんは私と居てくれたし、友達と遊ぶ機会があっても私を優先してくれた。
何も言わずに私のことを優先してくれるので、無理してないか心配になって『大丈夫だよ?』と彼に言った。
すると彼は笑顔で『瑞希と一緒にいる時が一番楽しいから』と答えてくれた。
とっても嬉しかった。私も同じ気持ちだったからだ。
小学校を卒業する前の頃。お母さんに『愁くん以外に友達はいるの?』と訊かれた。私はその時、心配されているのだと思った。
その時、私は他にも友達を作った方がいいのだと思った。だから、作ることにした。
いつもはしゅーくんに頼ってたけど…これまでしゅーくんに頼りすぎていた部分があったので、今回は一人で挑戦しようとした。
……その時、一人で挑戦しようとした私が馬鹿だったのだ。
□
小学校を卒業した春休み。私は話しかけられやすいようにオシャレを勉強して、話しかけられるように声の発声練習もした。
しゅーくんには、全部秘密で。
中学校に入学して中学生になった。その頃には早くも、私はもう思春期になっていた。
もし友達ができた時……恋心とかは分からないけど、しゅーくんといて揶揄われるのはなんとなく恥ずかしいな、と思い始めていた。
それに、しゅーくんの力を借りないと見栄を張って、その日からしゅーくんの交流は一切断つようにした。
……一切断つ、と言っても。別にしゅーくんの事を忘れるわけではない。友達が出来たら、また仲良くしようと決めていた。
それから、私は友達を作るため、クラスメイトに話しかけ続けた。
時々、
しゅーくんの力を借りる訳には行かない……と、自分に言い聞かせて。
□
……しばらく時間が経って、あっという間に中学三年生の受験生になって''しまった''。
その時にはまだ、私は友達と真に呼べる存在はできなかった。
男子からは、告白され続けられたけど……視線が恐い。それに、恋に興味があった訳でもないのでそれを全て断った。
女子からは、男子からの告白を全部断るせいで虐められた。
心を無にして我慢し続けたけれど、悪質な虐めはエスカレートしていった。
しゅーくんに助けを求めようか……そう、一瞬脳裏に過ったけど、今更頼っても……と思ったので、友達ができるまで我慢し続けた。
けど、結局中学生になって友達と呼べる存在はできなかった。
どう接すれば友達と呼べる存在ができるのか、ずっと
□
高校受験の時、家から一番近い高校を選んだ。偏差値も悪くないし、特に夢も無かったから。
……まさか、しゅーくんも一緒にいるとは思わなかったけど。でも、やはりここでもしゅーくんを頼るのは辞めておいた。
……高校生になっても、友達と呼べる存在ができるのには時間がかかった。
やっぱり男子達の視線は恐いし、女子達からは軽く話す程度で止まってしまって……
けど、あるきっかけでそれは変わった。
一人の女の子が階段から落ちそうになっていたので、咄嗟に受け止めた。
その子に『なにかお礼をさせて欲しい』と言われた。もう友達が欲しくてたまらなかった私は『友達になってください』と答えた。
その子はそれを、快く受け入れてくれた。
いっぱい話すようになって、やっと友達と呼べる存在が……と思った。
すると、他にも女の子が話しかけてくるようになり、様々な子と仲良くなれた。やっとできたのだ、私に沢山の友達が。
その時、『瑞希ちゃんって案外話しかけやすいね!』と言われた。
□
友達が出来たので、中学と違って思春期をとっくに終えていた私は、しゅーくんに話しかけようと思った……のだけど。
そういえば、しゅーくんともう何年も話していないことに気づいた。だから、どう話しかければいいかわからなくなった。
これまでみたいに話しかければ……と思った、できなかった。目が合ったけど、気まずさが流れて眺めることしかできなかった。
その日の放課後、しゅーくんと一緒に帰ろうと思ったが、話しかけることは出来ずに
言い出しづらかった。誘いたいけど、誘えない。時間が経って、藤村さんが帰り、しゅーくんは一人となった。
一人になっても、どう誘えばいいか分からなくて……あれ?
しゅーくんが帰らない。なんでだろう……
「ずっとここに居るようだが、帰らないのか?」
彼が急にそんなことを言った。信じられなかった……彼から来ると、思わなかった。
久しぶりに名前を呼んでくれた。疎遠になっていたのに、私のことを見ていたみたいに、タイミングが良かった。
……正直、なんとなくだけど嬉しかった。
●
復縁した今となっては、私はとても馬鹿なことをしていたと思う。しゅーくんは私のことを気にかけていたのに、私は……
だから、これからもっと仲良くなっていきたい。大好きなしゅーくんと、一緒にいたい。
……あれ?復縁して以来初めての告白を聞いて、私はなんでしゅーくんの事を思い出していたのだろう?
……まあでも、恋愛には興味がないし。なにより、目の前の男の子のことはよく知らない。
だから私は、また何故かしゅーくんの事を思い出しながら、こう言った。
「ごめんなさい」
……これからは、離れないから。
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