第105話:情報共有
ガジルさんは少しばかり寂しそうな顔をしていたが、仕方がない。
キラースキルは、それだけ風当たりの強いスキルなのだ。
「しかし、バードスラッシュという事は、実力で従魔契約を行ったのですね」
「そういう事になるのかな?」
デンに視線を向けてみたが、彼はそっぽを向いてしまった。
俺がジーラギ国でどのような目に遭い、追放された理由も知っているので、アクトに対して思うところがあるのだろう。
「それにしても、どうしてガジルさんたちが? ジーラギ国を出たと聞いていたのですが?」
「あー……まあ、色々あってな。気づいたらこっちにいたんだ」
「気づいたら?」
「話すと長くなる。できれば安全に情報共有できる場所があると助かるんだが?」
ジストの森は魔獣が生まれ落ちる森である。
それは元門番長であるガジルさんなら当然知っている事だ。
だが、アクトは苦い表情になったものの、この場で問題はないと口にした。
「……ガジルさんたちがいた頃と、大きく変わりました。現在、ジストの森で魔獣が生まれ落ちる事はありません」
「……そうなのか?」
「はい。少なくとも、二ヶ月以上は確認できませんでした。私たちもジストの森を中心に活動しているんです」
「魔獣が生まれ落ちなくなった理由に心当たりは?」
俺の質問に対して、アクトは首を横に振った。
「分かりません。定期的に調査を進めているのですが、全く分からないのです」
「そうですか。……デンは何か分かるか?」
「我も分からんな。だが、魔獣の気配が全く感じられないのは確かだな」
これは、俺たちが知っているジストの森やジーラギ国と思わない方がいいかもしれないな。
「なあ、アクト。俺たちはジーラギ国を出ようと考えているんだが、船の当てとかはないか?」
「船ですか……すみませんが、難しいかと」
「だよなぁ。これだけの被害だし、すでに船も出払っているだろうしよ」
「あ、いや、違うんです。現状、海の方にも大量の魔獣が存在しており、船での移動が難しいという意味です」
「……そうなのか? 船が、あるのか?」
これは予想外の情報である。
王侯貴族がさっさと逃げ出すために船はすでにないものと思っていたのだが……。
「一応は、あります。ですが、ジーラギ国に残っている民が全員乗れるわけではありません。そもそも海の魔獣を撃退する手段が私たちにはないので、どうしようもないといった状況です」
「そうなのか。なら、俺たちがそれを使うってのは難しそうだな」
「……その船は、何人乗りなんですか?」
「……レインズ?」
ガジルさんが驚いたように俺の名前を呟いた。
船を手に入れられるチャンスなのだから、このチャンスを逃すわけにはいかない。
別にアクトたちと争うつもりはないので、そんな心配そうにこちらを見ないでもらいたいな。
「……俺とデンなら、海の魔獣をどうにかできるかもしれません」
「そうなのかい? いや、だが、従魔……デンが強い魔獣である事は彼は雰囲気で理解している。レインズさんのバードスラッシュが役に立つ事も。ですが、それだけでは……」
「言っていませんでしたが、俺はWスキル持ちです」
「レインズ、いいのか?」
「はい、ガジルさん。この状況で隠すのは悪手ですし、これでダメなら別の方法を探すだけです」
苦笑を浮かべながらガジルさんにそう伝えると、アクトへ向き直る。
「俺のもう一つのスキルは――魔獣キラー、キラースキルです」
俺の言葉にアクトは表情を変える。同行者の二人は明らかに嫌悪感を露わにした。
これは、ダメだ。俺がそう思っていると、アクトが一歩前に出てくる。
「……魔獣キラー、ですか」
「……はい」
「……そうですか、あなたが……」
「……ガジルさん、やっぱり俺は――」
「無事でよかったです!」
…………な、なんだと? この反応は、どう返したらいいんだ?
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