第100話:殺気の正体
魔獣キラーのスキルを持っている俺ですら冷や汗が流れる程の殺気だ。エリカたちが耐えられるかどうかが心配で振り返る。
「……」
額に汗を浮かべているが、膝を折るなんて事はない。リムルですら震えている中でもなんとか耐えていた。
ならば、俺にできる事をするしかないな。
「はあっ!」
こちらに放たれている殺気に俺の殺気をぶつける事で霧散させる。これで多少は威圧が和らぐはずだ。
「……あ、あれ? 楽に、なった?」
「大丈夫か、リムル?」
「は、はい。これは、レインズさんが?」
「あぁ。だが気をつけてくれ、まだ殺気は放たれているからな」
ホッと胸を撫で下ろしていたリムルに釘を刺しつつ、俺はエリカとガジルさんに目を向ける。
二人とも無言のまま頷いてくれたので、俺は先頭に立って歩き出した。
これだけの殺気が常に放たれているとなれば、そんじょそこらの魔獣なら逃げてしまうか、殺気に当てられて死んでしまうのかもしれない。
ならばその死体はどこに行ったのかと考えなくもないが、周囲に誰もいない時に殺気を放っている何かが喰らっている可能性だってある。
正直、35年生きてきて、これほどの恐怖を味わった事はない。……デンと対峙した時とも、また違う恐怖だ。
歩き始めてどれほどの時間が経ったのか、全く分からない。
殺気を相殺させる事に集中しており、少しでも気を抜けば再びさっきの嵐に晒されるだろう。
さらに言えば奥に進むにつれて殺気の強度が上がっている。この場で晒されればエリカやガジルさんは耐えられるかもしれないが、リムルはそうもいかないはずだ。
そんな事を考えていると、視線の先にいままで見た事のない何かが見えてきた。
「……おいおい、ありゃあなんだ?」
「……わ、私に聞かないでくださいよ。レインズは?」
「……俺も初めて見るな」
エリカは声も出ないようで、それはスノウも同じだった。
……いや、違うか。スノウの場合は真っすぐに目の前に現れた
あれが、デンが警戒した何かという事だろう。
「どうするよ、レインズ?」
「そうですねぇ……」
俺はとりあえず、足元に転がっている小石を拾い上げて漆黒の空間に投げてみる。
すると、放たれている殺気に負けて到達する前に弾け飛んでしまった。
ならばと
今回はひびが入ったものの何とか漆黒の空間に届いてくれた。だが――
「……何も、起きない?」
「……なんていうか、吸い込まれていかなかった?」
「……俺にもそう見えたなぁ」
エリカとガジルさんがそれぞれの感想を口にする。
しかし、吸い込まれたという事は漆黒の空間の先には何かがある、という事だろう。
念のためにもう一度周囲の気配を探ってみたが、目の前の空間意外に怪しい気配は見当たらない。
となれば、選択肢は一つしかないだろうな。
「……行こう」
「大丈夫だと思うか?」
「分かりませんが、他に選択肢がありません」
「リムルさんも大丈夫?」
「……は、はい!」
「ビギャギャー!」
どうやらリムルとスノウも大丈夫そうだ。
俺たちはいつでも戦えるようにと剣を抜いて臨戦態勢に入る。
恐怖がないわけではないが、それ以上にデンを助けたいという想いの方が強かった。
「……よし、行くぞ!」
俺の掛け声に合わせて、ゆっくりと漆黒の空間に足を踏み入れたのだった。
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