閑話:レミー視点
いやー! まさかこんなところでレインズと会えるとは思わなかった!
これは絶対に冒険者に勧誘するべきだと息巻いていたんだけど……なんであいつはやる気がないのかしらね!
そしてその連れの女の子よ! あの子も大概に強い気がするんですけど!
……まあ、私ほどではないけど、それでも実力的にはCランクからBランク程度の実力はあるでしょうね。
Cランクのザックを簡単にぶっ飛ばしたって聞いけど、あいつはCランクの中でも最底辺いるからなー。他の同ランクとは比較できないんだよねー。
しかし、レインズはあまりやる気がなさそうだけどエリカとギースはやる気満々だし楽しみだね!
――そして、今日は約束通り三人で依頼をこなすため冒険者ギルドに足を運んでいる。
AランクのあたいがFランクとパーティを組む事にギルド側は難色を示していたが、フリックはエリカの実力を知っているからフォローしてくれた。
変な魔獣もうろついているみたいだし、無駄な時間を過ごすなって事かねぇ。こちとら自由な冒険者なんだけどねぇ。
「それじゃあ行きましょう! レミーさん!」
「楽しみだなー!」
「……はいはい、行こうかね」
まあ、ギルドがどう思おうとあたいは自由にやらせてもらうけどね。Aランク魔獣の討伐は、明日以降でやらせてもらうよ。
シュティナーザから西の街道を進むと広大な森がある。そこを縄張りにしている魔獣、ラビットホーンの角を納品する依頼。
単体のランクはFランクだけど、集団になるとEランクに格上げとなるからギースにはちょうどいい依頼だったね。
「……つまらなーい。弱すぎだよー」
「あはは! まあ、エリカには退屈な依頼だったかもしれないね!」
エリカなら群れと遭遇しても一人で倒してしまうだろう。
だが、納品系の依頼はただ魔獣を倒せばいいってわけじゃないんだ。
「ギース! こっちの奴は角が折れてるじゃないか!」
「す、すみません!」
「エリカは角を完全に切っちゃってるよ! これじゃあ納品できない!」
「ご、ごめんなさーい!」
今回の依頼はラビットホーンの角であり、そこを損傷させてしまっては意味がない。
角を傷つけないようにラビットホーンを狩り、丁寧に解体する必要があるのさ。
それに、角は依頼完了に必要だけど、他の部位もギルドに卸せば小遣い稼ぎにもなるから解体作業もしっかりと教えておかないとね。
「うっ! ……私、苦手です」
「これくらい簡単さね! ほら、ギースを見てみな!」
「……ギース君、どうして平気なの?」
「え? ウラナワ村では子供も魔獣の解体を手伝ってたからさ!」
「それなのに魔獣の狩り方は残念だったねー」
「……すみませんでしたー!」
ギースはまだ粗削りだけど、レインズの指導が実を結んでいるみたいだね。危険な事に関しては敏感に反応して対応している。
エリカの剣技はあまり見ないものだけど、基礎がしっかりできているんだろうね。無駄のない動きだ。
「……エリカもジーラギ国から移住してきたんだったね?」
「そうです。その……レインズが国を出てから、魔獣が大量に溢れ出しまして」
「そりゃそうだろうね。でも、他の奴らも戦えるんだろう? キラースキルを嫌っているんだからね」
「うーん、兵士に関してはそこまで強い人はいないと思います。私がぶん投げちゃった人と同じくらいか、弱かったと思います」
「あっちゃー。そりゃあ国は大荒れだろうね」
だからなのかもしれないね。
シュティナーザ周辺をうろついているAランク魔獣も、噂によればジーラギ国から流れてきたんじゃないかって言われている。
レインズが狩り続けていたって事なら、ジーラギ国の魔獣はある程度の進化をしていると考えるべきだろう。そうなると、今後はAランク以上の魔獣が流れてくる事も考えておかないといけないね。
「……どうしましたか、レミーさん?」
「ん? あー、いや、なんでもないよ」
「解体終わりました!」
「よーし! 上手くできたじゃないか。後はエリカだけだね!」
「うえーん! 無理ですよー!」
「安全な時に慣れておかないと、いざという時にできなくなるよ! さっさとやらないか!」
「はーい! 分かりましたよー!」
ったく、こんなところだけは女の子なんだねぇ。
……いや、エリカでこうなのだから、他の兵士はもっと耐性がないと考えるべきかもしれないね。ザック程度の実力しかないのであれば。
「――うわああああああああっ!」
その時、森の奥から悲鳴が聞こえてきた。
「な、なんだあっ!?」
「ギース! こっちに来なさい!」
「二人共、あたいの後ろに隠れな!」
気配察知の範囲を広げると悲鳴の方に複数の気配があり、そのどれもがバラバラに逃げ惑っているように感じ取れた。
「まさか、Aランク魔獣が現れやがったか?」
「レミーさん! まずは助けに行きましょう!」
「お、俺もできる事をやります!」
「……分かった。だけど、危なくなったら自分の命を守る事だけを考えるんだよ!」
「「はい!」」
奥へ進むとあたいらと同じように依頼を受けて森に来た低ランクの冒険者。
そして、そこにいたのは冒険者だけではなかった。
『――ギギャアアアアアアアアッ!』
「……こいつは、マズいねぇ」
ギルマスから話は聞いていたが、あたいとは相性が悪すぎる! 準備不足も甚だしいね!
「二人はシュティナーザに戻って援軍を呼んできな!」
「レ、レミーさんは!?」
「あたいは時間を稼ぐ! だから援軍を――」
「私も残ります!」
「エリカ!」
「ギース君は援軍を! 早く行きなさい!」
「は、はい!」
パニックになっていた冒険者を先導してギースが来た道を戻っていく。
「……よかったのかい、エリカ?」
「私も剣には自信があります。それに、飛ばれたらレミーさんでも厳しいのでは?」
「はん! 強気だねぇ。……でも、助かるよ。死ぬんじゃないよ?」
「もちろんです!」
さぁて、間に合ってくれよ――レインズ!
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