第17話:到着ウラナワ村
ライバーナから離れていくと、魔獣と遭遇する頻度も高まってきた。
しかし、俺とギースが前衛、ミリルが後衛、メリースさんが中衛で指示を出すことで、難なく乗り越えていく。
リムルはというと、デンの背中に乗って移動しており、時折毛並みを撫でながら笑っている。
「ふむ。こういった移動も悪くはないのう」
何やらまんざらでもなさそうな事を呟いているデンを見ると、何故だか無性に腹が立った。
「……はぁ」
だが、リムルの安全のためには致し方ない事なので、ウラナワ村に到着したら一度デンと一緒に訓練でもする事にしよう。
そんな事を考えながらの道中は意外とあっさり進み、気づけばウラナワ村の門が見えてきた。
門の前には二つの人影があり、やはりというか、あちらからもこちらが見えているのだろうが、デンを見つけたのか一人が慌てているように見える。
「あれは、ギレインね」
「親父……はぁ」
メリースさんとギースがため息をついている。
もしかすると、慌てている方がギレインさんなのかもしれない。
説明が必要だろうと、ギースとミリルが先に門の方へと走っていく。
「デンを小さくするか、影の中に隠しておいた方がいいですか?」
「む、我はこのままの方が良いのだが?」
「村の人に迷惑を掛けるわけにはいかないだろう」
「それはそうなのだが、ずっと影の中というのも暇なのだよ。小さくなると、また犬と間違えられてしまうしのう」
「ご、ごめんなさい」
最初に犬と間違えたリムルが謝罪を口にした。
「そのままでいいと思うわよ」
だが、メリースさんは当たり前のようにそう答えた。
「いいんですか?」
「だって、レインズさんの従魔なら危害を加える事なんてないだろうし、戦力になるからね」
「我がいれば、この村は未来永劫、平和のままであろうな」
「それは頼もしいわね!」
笑っているが、それはメリースさんが決めていい事なのだろうか。
とりあえず、ギレインさんともう一人の方がご年配の方のようなので、偉い人なんだと期待しよう。
説明は二人がしてくれているし、好都合だからな。
「おかえり、リムル。それにメリースもご苦労だった」
「ただいま戻りました、村長!」
「おぉぉ……こりゃまた、でけえなあっ!」
「ちょっと、あんた! 嫁が苦労して帰ってきたのに、最初の言葉がそれなのかい!」
「あだっ!? 痛いって、メリース!」
メリースさんから拳骨を貰い、大きな体を丸めているギレインさん。
何というかまあ、女性は強しという事か。
「それで、あなたがメリースたちを助けてくれたっていう、移住希望の方だね」
「はい。レインズと言います。ジーラギ国で門番として20年間勤めていましたが、解雇されてしまいまして」
「どんな事情があれ、儂らは移住者を歓迎しておる。それも、腕の立つ御仁であれば、なおさらじゃ。申し遅れましたが、儂は村長のトマスでございます」
「ありがとうございます。……ただ、一つ気になる事がありまして」
リムルは問題ないと言っていたが、やはり確認は必要だろう。
トマスさんが村長であれば、なおさらだ。
「その、リムルからは若い人を募集していると聞いています。俺は35歳とそこまで若くはないんですが、大丈夫なんでしょうか?」
「レインズさん! そこは私が大丈夫だって言ったじゃないですか!」
「いや、まあ、そうなんだがな。俺は自分が若くないって十分理解しているから、一応確認はしたかったんだよ」
頬を膨らませて怒っているリムルだが、俺にも立場と言うものがある。
長く現役を続けられるわけでもなし、必要ないと言われればすぐにでも立ち去らなければならないのだ。
「もちろん、問題はございませんよ。ウラナワ村は、レインズ殿を歓迎いたしますよ」
村長は穏やかな笑みを浮かべ、そう口にしてくれた。
「ありがとうございます、村長」
「だから言ったじゃないですか!」
「お、怒らないでくれよ」
「怒りますよ!」
腕を組んでそっぽを向いてしまったリムル。
うーん、どうやって機嫌を直してもらえばいいのやら……全くわからん。
「なあ! レインズさんよ! こっちの従魔だが、強いのか!」
「えっ? あぁ、えっと、強いですよ」
「我の名はデンである」
「そうか! デンか! いやー、良い毛並みじゃないか! それにでかい! こいつは、頼りになりそうだぜ!」
「ちょっと! 自己紹介は!」
「はい、すんませーん」
……ギレインさん、威厳なしだな。
「俺は自警団の隊長をしているギレインだ。メリースの旦那で、こいつの父親だ!」
そう言いながら、ギレインさんはギースの肩に腕を回して抱きしめている。
「おい、親父! 臭いから離れろよ!」
「なんだ、恥ずかしいのか、こいつめ!」
「レインズさんが自己紹介をするだろうが!」
「あー……レインズです。よろしくお願いします、ギレインさん」
ギースよ、俺の名前を言ってしまったら、自己紹介も何もないんだが。
「俺の事はギレインでいいよ。さん付けなんて性に合わねえからな! 敬語もなしだ、いいな?」
人好きのする笑みを浮かべて手を差し出してきたギレイン。
「……わかった、ギレイン。それじゃあ、俺の事はレインズで」
俺はそう返事をしながら、その手を取る。
振り返ると、何故だかリムルはいつの間にか機嫌を直しており、こちらを見ながら微笑んでいた。
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