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「最近会わなかったな」
ドミトリーは僕を待ち伏せていたかのように声をかけてくる。
「どうしてたんだ。タバコはどうだ」
「買い物を済ませてくる」
僕はドミトリーを振り払うようにコンビニの中に。
「待ってるぜ」
ドミトリーはそう言って、灰皿のほうに歩いて行く。
僕は棚からポテチを掴み取り、
飲み物の冷蔵庫からほうじ茶を1本取り出す。
それからレジに行って、タバコの番号を店員に告げる。
「一箱ですか」
「ふたつ」
店員がバーコードを読み取って、商品をレジ袋の中に。僕は札を二枚、カウンターに置く。それから袋を取って、別の手で小銭を受け取り、小銭をジャージのポケットにねじり込む。
そして、買ったばかりのタバコの箱を開けながら、ドミトリーの待つ、灰皿の前に。
「タバコなら買わなくても」
ドミトリーは待ちかねたように言葉を発する。
「ちょっと、金が入ってさ」
「そりゃ凄いな」
「たまにあるさ」
「仕送りかい」
「そんなところかな」
ドミトリーはニヤつきながら僕を見る。
「学校なんか行ってないのに律儀なもんだ」
「通信制なんだよ」
「それなら、わざわざこっちに来なくても」
「たまに、通わなくちゃいけない。それに、ちょっとした訓練と思っている」
「なるほどね」
「どうだい、バイトでもやるか。夜の仕事だ」
「ありがとう。でも、今のところは大丈夫」
「あんたの隣の住人はどうなってるんだい」
「悪いけど、隣のことは僕もよくわからないんだ」
「この前、たまたま通りかかったんだが。別の女が、出てきたぜ」
「客でも来てたんじゃないか」
「いや、その後いつもの女とすれ違ったんだ」
「小柄な女」
「そう、小柄な女だ。俺が見たのは大柄の体つきのいい女だった。といっても、俺ほど大きくはないが。ちょうどあんたくらいか、少し大きいくらいの」
「見間違えるわけはないか」
「そうだな。何せ俺は二人同時に見たんだ」
イワノビッチは僕の顔を覗き込み、笑みを浮かべた。
こいつは、待ち伏せして女を追いかけ、その時に別の女と遭遇した。
「そういうことか」
「そういうことさ」
イワノビッチはタバコを吸いこんで、大きく煙を吐き出した。
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