第8話 ダルメール王国のその後
◇◇◇
「騎士団長、報告を聞こうか?」
「はっ!ダルメール王国を調査した結果、驚くべきことが分かりました!」
「続けろ」
「まず、ダルメール王国では王族による圧政と散財により、国力が低下、民は重税に苦しみ、餓死者も出ていたとのことです。王族に逆らうものは身分を問わずことごとく処刑されており、恐怖によって国を支配していた模様。今回、アレクサンドル様の王宮襲撃に、民や心ある貴族からは賞賛の声が届いております」
「ふんっ、想像以上の屑どもだな」
「お陰でアレクサンドル様の理不尽な行動が勝手に美化されてラッキーでしたね?」
「うるさい、ゲイン。それで?王族は今どこにいる?」
「はっ!王宮の地下牢にまとめて放り込んでおります。王と王妃が産んだ3人の姫たちしかいないのが妙でしたが、ダルメール王は男児が産まれると母親ごとすぐに殺していたそうです。」
「なぜだ?大事な跡取りではないのか?」
「自分の王位を揺るがす存在という認識なのでしょうね」
ゲインが溜め息をつく。
「愚かな……永遠に生きられるものなど、ないというのに」
「ダルメール王は好色な王としても有名で、
「王妃は?」
「すでに処刑されておりました。おそらく男児を産んだときに処刑されたのでしょう」
「狂ってるな……」
「その他の姫たちはすでに国外に嫁いでおります。サリーナ様と同じ様に見目麗しい女奴隷から生まれた女児に一応姫としての身分を与え、結納金を取れるだけ取ってから嫁がせるのがあの国の常套手段だったようです」
「サリーナだけではなかったということか。娘を売った金で贅沢三昧とは……」
「実態は王のお気に入りである三人の姫しか王族としての待遇を受けておらず、奴隷のような酷い扱いだったようで……サリーナ様も、王族としての教育はおろか、食事も満足に与えられていなかったと報告を受けました」
「もういい。ご苦労だった」
「はっ」
「騎士団の中から身元の確かな者を数名選び、交代でサリーナの護衛にあたらせてくれ」
「後宮での護衛ならば、女性騎士を派遣いたしましょうか?」
「そうだな。なるべく穏やかで優しい性格の騎士を派遣してやってくれ」
報告を終えた騎士団長が部屋を出て行くと、
「ゲイン、事後処理を頼む。ダルメール王国の国庫を開き、まずは飢えた民衆に食糧を与えろ。我が国からも医師団の派遣と食糧支援を行うように。必要なら技術支援も行え。当分の間税は課さずに国力の回復に努めろ」
「王族はどういたしますか?」
「一般公開で裁判を行う。王族をどうしたいか、ダルメールの民衆の手に委ねるがいい」
「それはそれは……一番厳しい結果になりそうですね」
「身からでたサビだな。民たちが正しく裁きを下すだろう」
「ところでアレクサンドル様」
「なんだ?」
「メイド長から、アレクサンドル様がサリーナ様に破廉恥な行いを強要していると苦情がきておりますが?」
「そんなことはない」
「メイド服を手配されたとか?」
「サリーナが欲しがっただけだ」
「ちなみに本日はどこでお休みになる予定ですか?」
「……サリーナに夜、顔を出すと約束した」
「もうあんた明日にでも結婚したらどうですか?」
「考えておく……」
◇◇◇
「サリーナ様、どこか痛いところ、辛いところはございますか?」
後宮に派遣された侍医は元は王妃の主治医であり、優しい雰囲気の女性医師だった。
「いいえ、エレン先生」
「持病は無さそうですが、お体が大分弱っているようです。しっかりした休養が必要ですわ。体調管理のための食事メニューをお作りしますね。好きなもの、逆に食べられないものはございますか?」
「ここのハーレムのお食事はどれもとても、美味しいです。たくさん食べることが出来なくて申し訳ないのですけど」
「
穏やかに微笑むエレンを見てサリーナはきょとんとする。
「私に合わせて?ハーレムには他にも大勢の女奴隷がいるのではないのですか?」
「ああ、ダルメールのハーレムの噂は聞いたことがございます。そのような誤解をなさるのもご無理はございませんね。ラクタスには奴隷制度はございません。先代から側妃制度もなくなりました。ラクタスの
「次期王妃?私が?」
「ええ。私は王妃様付きの主治医ですから。ご婚約を結ばれてから、サリーナ様がいらっしゃるのをいまかいまかとお待ちしておりましたよ」
「嘘だわ……」
「どうなさったのですか?」
「アル様……アレクサンドル様は私のことを、女奴隷としてハーレムで仕えろと仰ったのです」
「まぁ!」
「初めてお会いしたとき、私にひどく怒ってらしたわ。だから、王妃として迎えようなどと思っていらっしゃらないと思います」
「まぁ!すっかり立派になられたと思っていたのに、アレクサンドル様にも困ったものね」
「アレクサンドル様にはとても優しくして頂いてます。私は奴隷で十分幸せなのです」
「本当に、困ったこと……」
エレンが溜め息をつくのを不思議そうに見つめるサリーナだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます