第30話 儚く消えるもの

 知らぬ間に、道端の草が白く染まっている。

「見てください、ゆう様」

 そこまで声に出して初めて、なつは、隣に居たはずの小さな影が消えていることに気付いた。

 これで、この『禁域』は正常に戻る。安堵の息が、喉で止まる。しかしこれが、捺の職務。ようやく出てきた冷たい息に、捺は唇を歪めた。

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