第37話 ニトさんのドラゴン講義
「ギフト?」
「王女様からもらう、勇者の証と言えばわかるか?」
「お、おう」
アイシャと契りを交わすと勇者になれるっていうのはアイシャから聞いた気がする。それをニトさんはギフトと呼んでいるらしい。
しかし、俺はまだアイシャから何ももらってはいないはずだ。
「君は、アイシャと既に会ったことがあるな?」
「そうですけど、なぜわかるんですか?」
「王女が放った魔力の残滓が君を包んでいるからだ。それもかなり色が濃い」
「俺を包んでいる?アイシャの魔力が?」
「しかし、残滓と言うには濃すぎる。君は既に、勇者の証ではなくとも、それ相当のものをもらっているというのか?」
ニトさんには俺の何が見えてるんだろう?アイシャが会社でやったハートリーダーの赤い光みたいなやつなんだろうか?
「くっついたりチューしたりイチャイチャしてたんでそれかもしれません」
「よもや魔女とイチャイチャとは・・・」
ニトさんが青ざめて絶句している。アイシャがこっちの世界で魔女と呼ばれているのもあるのかもしれない。
「アイシャはニトさんにとって、怖い存在なのでしょうか?」
「アイシャ・グランドベルの能力や取り巻く環境について、懸念すべきことが大きく分けて3つある。ひとつめは人の心を読むこと。これだけで他国はグランドベル王国と交流を持ちたがらない。人間は腹の底にどす黒い本音を隠し持つ生き物だからだ」
「ま、そうですね。心を読まれることは良い気はしないなぁ」
「ふたつめ、勇者の証を持っている。これについては君に譲渡して終わる話なのだが・・・結果、君が強くなればなるほど、王女が更なる権力を持つ」
「あれ?もしかして、ニトさんってあんまり俺に協力したくないのって・・・」
「王女はただでさえ心を読む能力だけで恐れられているんだ。勇者がそばについたら無敵だろう」
「ほ、他の国にも勇者とか・・・いないんですか?」
「いない。そこで三つ目の話になるのだが、この世界には盟約のドラゴンという『中立の立場』が存在する」
ドラゴン、ドラゴンときたかぁ・・・やっぱ異世界なんだよなぁ。会ってみたいな。
「何を惚けてるんだ?その盟約のドラゴンは、今グランドベル王国を攻撃しているぞ」
「は?なんで!?」
「古の盟約を破ったからだ。詳しくは国王から聞け。俺はドラゴンの卵を護らねばならない」
「に、ニトさんは、俺とドラゴンの、どっちの味方なんですか?」
「説明する時間が惜しい。ただ、ドラゴンの卵の味方と言っておこう。我ら一族はずっと護っているのだ。ドラゴンの卵が孵化するまで。
しかし、現勇者は、ドラゴンの卵を壊して、この世界を作り替えようとしているのだ」
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