第36話 騒然と準備と


「コ、金色ノ、髪ノ、娘ヨ・・・・・・」


「ドラゴンが、喋ってます!?」


「気を緩めるなっ!このドラゴンの狙いは、アイシャ様だっ!」


バリィ!


ドラゴンの鉤爪が防御壁を貫通し、それでもまだ、反発する力を持って、なんとか踏み留まらせている様子でした。


「・・・・・・カノ・・・災禍の種をカエセ・・・」


「・・・・・・!!!」


返せ?なぜですか?なぜ、このドラゴンは返せ・・・と・・・?


「アイシャちゃん!!!」


「ーーー!!」


ボディ子さんがわたしの視界を遮るように、わたしに抱きついています。


「わたしがあの龍を倒すから!だから、アイシャちゃんはっ!わたしの言うことを良く聞いてね?わかった!?」


「ボディ子さん?」


「ほら、そんな不安そうにしないの。すぐに先輩が来るはずだからね?」


そういって、振り向いたボディ子さんはドラゴンに向かって走り出しました。





※ーーーーーー


何だか胸騒ぎを感じていた。


勇者と出会った時の方が命の危機を感じているからこんなに焦ることは無いんだけどな。


なんだか、急がなきゃいけない気がしている。


目の前に耳がとんがった狩人みたいな男がいきなり現れても、たいして驚きもしなかった。


何の革だかよくわからないけど茶色の胸当て、下は薄緑っぽい色の短パン履いてるんだけど、靴が茶色のブーツだ。


うん、変な格好だなぁ。


そして、呼び出された?男は緑色の髪をガシガシと掻いてルナ様に向かっていった。


「ルナ神、いきなり呼び立てて謝罪のひとつも無いのか」


「ごめーん。それはごめんね。でもさ、これ以上肩入れしたらルール違反だから、ね?」


「貴方の事情はそうなのだろうが、こちらも金色のドラゴンに動きがあって、行方を探していたところなのだ。あまり振り回してくれるなよ」


ドラゴン?ドラゴンですか!まじですか・・・いきなりすぎて話についていけない・・・


「そうなんだぁ。でもそれって規定路線じゃない?」


「森にいると噂のひとつも聞こえやしない。何を言ってるのかわからないな」


「ふーん。エルフなら風の噂だって簡単に聞けると思うけど?」


「・・・・・・」


エルフの男の方は黙り込んでしまった。


「あのー、はじめまして。ハルトと言います」


険悪なのは良くない。俺にまで影響が出る気がする。


「仲良くできるとでも思っているのか?」


と思ったら、なんかいきなりキビシーっすね。


「え?とりあえず・・・挨拶しただけなんですけど・・・」


「僕の名前はニトさ。ただのニトだ」


あっ、一応名乗ってくれるんですね。


「勇者をはじめ、君もそうだ。君がこれからすること全てに頭が痛くなる」


目頭を押さえていたエルフが、僅かに笑う。


「だが、それが君だろう。カサイ・ハルト。異世界からの旅人よ」


「あ、はい。宜しくお願い、します」


「宜しくなんかするもんか。力を手に入れて、やるべき事がわかれば勝手に巣立つ君なんて・・・・・・どいつもこいつも異世界人ってやつは・・・」


なんだろう、この人。友達いないのかな?独り言が多いぞ?


「じゃあニトちん、うまーくよろしくね?」


「ふん、そういう丸投げは3度目だ。そろそろ殴ってもいいか?」


「やだやだー。じゃ、ハルトくん、またねー」


そう言って水の粒子になって空に消えていくルナ様。


「くっ、あの女神め。都合良く使われてやるとしてもこう何度も何度も・・・・・・君も気をつけるといいよ。彼女は自分で決して動こうとしない、小間使いのスペシャリストなのだ」


「へ、へぇー。わかりました。気をつけます」


「さて、君の目的は明確みたいだから手短にいこうと思う」


なぜか歩き出そうとしないニトさん。


「一緒に来てくれるんじゃないんですか?」


「不本意だが行くとも。でもその前に、君のギフトの確認をしなければならない」




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