第35話 金色の龍の秘密

「グガアアアアアアア!!!」


「侵入を許すな!食い止めろっ!」


飛び散ったガラスの破片。金色の龍の首、そして、何重にも貼られひび割れていくバリア。


全てがスローモーションで、呆気に取られていたわたくしに、ボディ子さんが覆いかぶさります。


「アイシャちゃん。大丈夫!?」


「あれは、盟約のドラゴン・・・・・・」


「なに?敵?味方?どっち!?」


お母様から、聞いたことがありました。『その存在こそ、勇者を生み出す者。金色に輝く龍。その鱗で、全てを照らし、影をつくる』でしたか。


伝説の存在と呼ばれ、もう現れないと思っていました。でも、今ここに、現に姿を見せている。その意味とは・・・・・・?


「お父様!!」


立ち尽くしているお父様。お父様なら、何か知っているのでは?


「アイシャ、無駄なのだ。この龍の前では、おまえの我儘は通らない」


「どういうことですか?」


「盟約のドラゴンが、新しい勇者の誕生を迫っている。もう少し時間があると思っていたが・・・そうか」


「ちょっと待って!なんでそうなるの!?アイシャちゃんは、成人したらすぐに、勇者と結婚しなきゃダメだったってこと?」


えっ?ボディ子さん!?


「そうだとも。無論、それしか道が無かったわけではない。アイシャが心に決めた男を勇者にすることもできる。それが、金色の髪を授かったアイシャの宿命なのだ」


はい。確かにそうです。それがわたくしだけにできることだと教えてもらっていました。


けれど、まさか、15歳になった昨夜までがタイムリミットだったなんて。


そして、その宿命を破れば、ドラゴンが襲ってくるなんて!


「グガアアアアアアア!!!」


「おい!押し返せっ!アイシャ様を守れっ!」


ムエルさんを中心に、魔力を集中。他の魔道士の方と魔力を練り合わせ、障壁を展開しています。


「ムエルさん・・・・・・」


「ぐぅっ!貴方に・・・最後まで伝えなかったのは・・・こっちの落ち度ですがっ!それでもね、わたしは、疑問に思ってましたし、辛かったんですよ!可哀想!って、思ってたんですよッ!?」


「なんで、教えてくれなかったんですか!?」


「そりゃあ、貴方が、絶望した顔なんてッ!みんな、見たくないですからね!わたし、だって!」


「!!」


ピシ、ピシ、とバリアにヒビが入ります。


それを必死に支えているのは、間違いなくムエルでした。ドラゴンが押しているのでしょう、膝をついて滝のように汗を流しています。


「盟約のドラゴンは、世界に魔王が現れない代わりに生まれた平和の象徴だ。この龍は次世代の勇者を生み出すことで生き永らえる。故に、盟約違えれば、その地を滅ぼして、自身も朽ち果てようとする」


「そんな!」


「そして、魔王が生まれ、世界は漆黒に染まるだろう。言い伝え通りならな」

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