第30話 非現実の火柱
どこだここは!?
めちゃくちゃ熱いホッカイロマシマシの毛感触にびっくりして飛び起きた。
スベスベのワニの皮みたいな、でも岩みたいな乱雑な凹凸が頬に感触として残っている。
んあああああ!?敵陣地?
なんか、鋼鉄の兜とか、白い帽子を被ったおっさん達が周りを取り囲んで口々に何か言ってる。
慌てて現状を整理する。まずは水、食料が無い。ボディ子にもらったクッキーがポケットの中で3枚ほど潰れているだけだ。
「よう、日本人。名を名乗れよ」
青く雲ひとつ無い空に浮かんでいる人間が1人。
そいつは赤いマントをヒラヒラさせていて、体は太陽光を跳ね返す銀の鎧だ。黒髪の男。それだけでピンと来る。
ーーーもしかして、こいつがアイシャの言っていた勇者なんじゃないか、と。
「た、大将を、どうしたああああ!!!」
言語がゆっくりと俺にわかるもので入ってくる。口の形が違うものを喋っているのだが、どうやらアイシャの魔法は継続中らしい。俺にもわかる日本語に変換されていた。
四面楚歌状態。上には勇者っぽいやつ。
危険度で言えば、勇者を警戒するべきだろう。
俺は下のやつらから攻撃されるかもしれない可能性を一旦置いといて、精一杯睨んでやった。
こいつがアイシャにひでえことをしようとしたやつなら、黙っていられない。
「おまえ、勇者か?」
「察しが良いなぁオイ」
やっぱり、そうか、と俺は片目を瞑って微妙に現実逃避した。
「ゆ、勇者だと!?」
「空を飛べるとは卑怯だぞ!」
「お、おまえが大将を隠したのか!?」
口々に俺の周りから文句が飛ぶ。
勇者の最初の一言では、周りのいる兵士たちは何も気が付かなかった。俺だけに聞こえるように、勇者が何か特別なことをしたのか?
アイシャの不思議な力を見ているから、目の前の勇者が何してくるか、見当もつかない。
だからこそ、最大限に警戒した。まずは、こいつが味方かどうかだ。
「アイシャのお父様が来て、こっちの世界に飛ばされたんだ。これは、今どんな状況だ?」
「めっちゃ冷静なんだな。てめえの味方が1人もいないのに、身の安全も放棄して現状把握か」
げ、やっぱりこいつは敵か?話しかけて来たから、友好的だと勘違いしそうになるし、今はこんな異世界に放り出されて、誰かに頼りたい気持ちはある。
でもな、勇者に頼るのだけは無いわ。
「普段、本気を出さないタイプだからな。ボディ子に怒られる」
「・・・?」
ボディ子に頼むように、自分自身に何をすればいいか指示しようとすれば、気持ちがテンパることはない。
「おまえが不気味な存在だってことは、良くわかってるつもりだ」
「不気味、ねぇ。少なくとも、姫様みたいに陰湿ではねーよ。俺のやり方はもっと、わかりやすい」
勇者が手を前に突き出す。
直後、俺の後ろで火柱が上がった。
ズドオオオオン!!!
兵士が何人か吹っ飛んだのが見える。
俺は思わず奥歯を噛み締めた。
「ご覧の通り、戦争中だ、日本人。生き延びてみろよ。俺のようになぁ!」
ふざけんなよ!俺は、まだ何の力ももらってねぇぞ!?
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