第25話 夢の中のあいつがいなくなるまで


何度も、靴作りに没頭してたんだけどな。


自慢の靴を買ってもらって、満足してもらえて、それだけで良かったんだけどな。


「どうかしたんですか?」


ボディ子にそう言われるが、別にたいしたことではない。


「まったりとした時間が流れていく・・・」


「なんか、一気にダメ店長になりましたね」


店の前の椅子に腰掛けて、アイシャとボディ子の3人でティータイム。ボディ子は何故か給仕服に着替えていて、カップに紅茶を注ぐ姿が凛々しい。


太陽の光がアイシャの髪をさらに金色に輝かせる。だから、ボディ子は背が高いけど目立つことはない。アイシャの後光により、ボディ子は隠された。


「アイシャちゃんのおかげですかね」


「そうだよな」


「はうううう。クッキーと紅茶って合いますね!」


「喫茶店でもやるか?社長に相談しようかな」


午後2時過ぎ、学生3人が店に来て以来、お客さんは来ていない。


たまにアイシャの写真を撮ろうとする不届き者がいるくらいなのだが、そういうアイシャに害がありそうな奴らのことはボディ子に任せてある。


意外に写真を撮るやつは男性じゃなくて女性が多いのだ。こんな平日の日中にここを通りかかるのは移動中の人か学生しかいない。


ちなみに店の前は一方通行になっているため、滅多に車が通らない。通行人は駅が近いからそれなりにはいる。


「て、店長、眩しそうですね。わたし、帽子被った方がいいですか?」


「ちょっと気が緩んだだけだから心配しないで」


「隠そうとしたってダメですよ。・・・でも、なんだかホッとしてる顔になってますね」


舞のことを忘れようとして、どれだけ仕事に夢中になっていたんだろう。夜中まで仕事して、帰ったら寝るだけの生活は大変だ。


アイシャが・・・自分の彼女が仕事場にいるってこんなに幸せなんだなって、軽く感動してる自分がいる。


「アイシャちゃんの金のオーラは凄まじいですが、店長のニヤついてる顔もやばいですよ」


「仕事したくなくなってきたわ」


「アイシャちゃんと一緒にいたいなら、しっかりしてくださいよ」


「心地良い眠気が・・・」


「ボディ子さん、こういう時、わたしはどうしたらいいんでしょう?」


「店長の心の声を実況していくのはどうかな?」


「それはやめるんだっ!!」


的確に俺の目が覚めるポイントを突いてくるボディ子。マジでアイシャに余計な事吹き込まないでくれる?


「・・・・・・!!」


「アイシャ、どうした?」


「まさか、いや、でもどうやって・・・?」


急にアイシャの顔が真っ青になる。


「アイシャちゃん、どうしたの?トイレに行きたくなったの?」


「・・・お父様・・・」


「「おとうさま!?」」


ボディ子はアイシャがほんとのお姫様だって知らないし、事情も知らない。だから、俺とは違って驚き具合が違う。


え?まさか、アイシャを追ってきたの?


どうやって!?


会社の犬小屋!ラッキー、無事かぁ!?

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