第24話 23

俺の作った黒のブーツをカウンターに置く。


「ここにハサミがあります」


「はい」


「十回ほど突き刺しても・・・ブーツには傷一つ付きません」


「なんで!?」


ふっふっふ。もっと驚くが良い。


「傷つけられるなら付けてみてください。ニッパとか使ってみますか?」


「待ってくれ。そうやって俺に傷つけさせて買い取らせる魂胆じゃないのか?」


心外な!だがそうだな。こんなこと許可する店長は俺しかいないだろう。


「もし傷がついてしまったのなら、それは単にわたしの技術不足でございます。ブーツに傷をつけてもお代は頂きません」


「よし、今の会話、ボイスレコーダーに取ったからな」


あらいつの間に。


勝ち誇ったような顔をするブーツくん。


「これでブーツが壊れても、あの女の子の連絡先だけ教えてくれれば悪いようにはしないから、な?」


今のこいつの一言で確信した。こいつは客ではない。ただの荒らしだ。


しかもアイシャを絡めてくるなんて許さん!


「ではわかりました。わたしも動画を撮ることにしましょう」


「は?」


俺もスマホを構える。


「良い宣伝になるかと思います」


「後悔させてやる!」


彼が最初に狙ったのは靴紐だった。ハサミの刃が両断しようと紐を押しつぶす。


ーーーだが、切れない。


「なんだこの紐は?」


丁寧なフリをして解説させてくれるブーツくん。


「この紐は自社特別製でございます」


次に彼が手に取ったのはブーツの中に入っている中敷。


「真っ二つにしてやる!」


真ん中から中敷を切ろうとニッパを両手で持って頑張るブーツくん。


ーーーだが、傷つかない。


「クッソおおおお!!」


ブーツくんのおかげで臨場感ある動画が撮れた。


「ご納得いただけましたか?」


「お、俺が悪かった、・・・買うよ」


「いえ、買っていただかなくて結構ですよ?」


「え?」


「ここの店のブーツは頑丈だ、と学校で宣伝して頂ければ幸いです」


ブーツくんは唖然としている。


「えっと・・・ほんと買うって。欲しくなったんだ」


「こちら、四万円になります」


「ぐううう。一万円足りないわ」


学生みたいだからお金持ってるわけじゃないって知ってたけどね。


「ではまた次回のお越しをお待ちしております」


「バイトして金貯めて来るわ」


ブーツくん、待ってるよ?



ーーー


店の外ではアイシャとスニーカーズがお茶とクッキーと共に楽しく談笑していた。


「キリンさんってどんな動物なんですか?」


スニーカーズA、素早くスマホの画像を出す。


「こ、これがキリンさんなんですねっ!この、キリンさんの横にいるシマシマはなんですか?」


スニーカーズB、素早くスマホで文字を打ちアイシャに見せる。


『シマウマ』


「可愛い動物さんですね!」


訂正、アイシャが楽しんでるだけでした。

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