第17話 じゃあね 〜ハルトの葛藤〜


一杯の日本酒を煽る。


桜の柄のおちょこは捨てられなかった。


あいつの箸も捨てられなかった。


好きだった舞。夢なら逢えるかなとか、現実逃避が激しくなって考えてしまう。


歩けないことはない。立ち上がることもできる。


日常、やることは山程ある。仕事に没頭すればいい。それだけだ。


だけど、その先は?



やめてくれよ。行かないでくれ。また、戻ったら笑ってくれるか?


そんなことは無いのに、願うだけだ。


こんなことを考えている間に、あいつは彼氏と体を重ねてるんだろう。


虚しいよ。悲しいよ。


まるで、それまで何も無かったように、夢のように消えた。


思い出を作りたくて生きてるんじゃ無い。


笑って生きたかっただけだ。君と、二人で。


それが、


・・・・・・


・・・・・・・・・


う、


うあああああああ!!!!


どうして君は遠くに行った?


引き止めたら、別れたくないって言ったらどうした?


そんな現実、受け止めきれなくて、逃げたよ。


ずっとそばにいたじゃん。結婚の話もしたじゃん。両親に挨拶したじゃん。


結局、俺が公務員じゃ無いからダメだってか?


そんなこと、が、大事だったんだな。


流石、教員一族だ。


不安か?不安だったのか?


今はもう、舞に聞くことができない。


何にも無くなった。空っぽだ。学生時代から、ずっと、ずっと付き合って、結局これか。


結局、大人になるまでの、寂しさの埋め合わせでしかなかったのか?


わからない。わからないよ。


誕生日の日に別れを繰り出してくるのはやめてくれ。心が死ぬ。


君は、君は、最後まで、ぎこちない笑顔だったから、わかった。いつもと違うから、聞いた。


「他に、好きな人でも、できた?」って。


そしたら、


「うん」って。


何でもないようにさらっと言わないでくれよ。


しかも、付き合ってたのかよ。二股かよ。


おまえが寂しがり屋なのは知ってるから、そういう進み方しかできないもんな?


気が狂いそうだ。


助けて、くれ・・・


だれか・・・




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