第14話 13

俺の三つ年下の弟の名は笠井流星という。


俺はもう卒業したが、俺と一緒の大学に行っている、教員の卵だ。


「アイシャ、弟が来たから早く着替えてほしい」


「ハルト様にお願いしてもいいですか?」


ですよねー。


急いで昨日の服をアイシャに着せ、カーテンを開けたところでリュウが部屋に入ってくる。


「グッドモーニンッ!マイネームイズ・・・」


「リュウ、普通にしゃべれ」


「おはよう、ございます。弟様」


「はああああん!?様付け!!兄貴、これはまさか新しい王様ゲーム!?」


天井を仰いでわざとらしく顔を手でおさえるリュウ。


「朝っぱらから楽しそうだな、おい」


「前の彼女より若いな!」


「うるせーぞ」


「前の彼女より可愛いな!」


「ありがとうございます」


「前の彼女より胸でk・・・ぐほおおお!」


リュウの腹に会社携帯当てといた。ふー、危ない危ない。


「リュウ、ひとつ頼みがあるんだが」


「なんだよ、出て行けとか言うのかよ」


そんな卑屈にならんでも・・・


「ボディ子を今日から出勤にするから。午後からのボディ子の授業、代返オネゲーします!」


「えええええ!?急すぎ!なんで?」


「抑止力のためだ」


「戦争・・・なのか?」


「ボディ子の力がどうしても必要だ」


リュウの目つきが変わる。アイシャはなんのこと?と首をかしげている。


ハートリーダーを使ったってわからないだろう。だって、俺と弟はほとんどノリで喋っているからだ。


「わかった。ボディ子の授業の数かける千円、用意してくれよ。ちなみに今日からエブリデイ?」


「もちろん今日からエブリデイ」


「御意。俺の代返グループが火を噴くぜ!」


おもむろに携帯を打ち出したリュウ。さすが、うちの弟は頼りになるぜ!


俺もボディ子に連絡しなきゃな。


ぷるるるる、ぷるるるる。


「先輩、出番ですね?」


テレパシーでも使ったのだろうか。朝からボディ子のノリが冴えてる。


「おはよう、ボディ子。早速だが、今日から日曜日以外エブリデイ出勤、頼めるか?」


「いいんですか?わたし、お役に立てますか?」


「もちろん、むしろ店に立ってくれるだけで助かる。かかしのように」


「かかし・・・ですか。わたしには無駄な肉が多すぎてお役に立てないかもしれません」


いや、別にかかしのように細くなる必要はないんだけどな。


「なら、こうしよう。ボディ子が店に来るのは一ヶ月ぶりだ。洋服の配置などが以前と違うから、それを覚えるまでは・・・今日だけボランティアってことでどうだ?夕食代と交通費で二千円出す」


「勿論、それで構いません。あの、授業は流星くんに代返頼めますか?まだ実習が秋からなので代返でイケます」


「もう頼んである」


「さすが先輩」


褒められました。


「今日は十一時に店に来てくれ」


「了解です。先輩の分のお昼のお弁当も持っていきますね」


「ちょっと待って」


俺はちらっとアイシャを見る。アイシャをボディ子にどう紹介しようか悩んでしまったからだ。


アイシャは俺の心を読んだのか、ジト目で腕に抱きついてきた。


「ボディ子、非常に申し訳ないのだが、昨日彼女ができてだな。彼女の分のべんt・・・」


「えっ!?兄貴昨日付き合ってその日にベッドインで朝チュン!?」


リュウがうるさい。


「流星くんおはよー。先輩、良かったですね、彼女ができて。弁当は三つ作っても構いませんよ。彼女さん連れてくるってことは職場恋愛なんですか?ま、その辺のところはお店で聞かせてください。ではまた」


電話が切れて、隣の姫さまがぷんすかしておりまする。どうやら嫉妬してるご様子。


「すごくハルト様を立ててくれる魅力的な女性ですね」


「いや、そりゃあ」


「そりゃまぁ」


「「ボディ子だからね」」


俺とリュウの声がハモる。


アイシャは納得していないようでハテナが頭上に浮かんでいるようだった。


「あいつ、見た目以外は完璧なんだよ」


見た目も一周回って魅力のひとつなんだが。


「人を見た目で判断してはいけませんよ?」


「ボディ子は女性なんだけど、身長百九十センチで体重は秘密」


「へ?」


あと彼女の情報は・・・


「握力百キロ、短髪で顔に星型の傷があるぞ」


「俺と同じ高校で砲丸投げとダンベル上げをやっていたから筋肉モリモリ。砲丸投げは全国大会優勝」


「ボディ子は教師を目指してるみたいだけど、リュウと一緒のゼミなんでしょ?どうなのかな?」


「まだ実習ないからなんとも言えないけど・・・子供が泣きそう」


ですよねー。


「だからアイシャさんや、兄貴がボディ子に惚れることは無いので安心して!」


「実際に会ってみないと信じられません。お二人が嘘を言ってるわけではないのはわかるんですが、想像がつかないんです」


「リュウ、写真ないの?」


「あるにはあるんだが・・・」


リュウが見せてくれたのは、一年前のゼミ合宿の写真だった。


丸太を担いでピースするボディ子がそこにはいた。








作者より。この章から、少しずつ既存の文章に変化を加えていきます。宜しくお願い致します。

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