第12話 11

すっかりアイシャに対しての恋愛感情を取り払い、言葉も若干子供に対するような馬鹿にした感じを織り交ぜる。


それでも、考えないようにしてることがある。


ーーーーッ!


それをバレないように取り繕うだけだ。


「何をバレないようにしてるんですか?」


ほらな。心を読めるとわかれば、こっちにだって考えはあるんだよ。大人舐めんな。


「ハルト様、諦めて全てお話されたほうが楽ですよ?」


思考停止。


「男は隠し事があるほうがモテるぞ」


「素直になってもらったほうがわたしも遠慮無く話せます。わたしはちゃんと正直に伝えましたからね?」


くっ、ここでピュアっぽさをアピールしたとしても俺が正直になると思うなよ!たまに黒歴史入るんだからね!!


「黒歴史ってあのアナザーワールドの?」


・・・スルーしよう。


「無視されると傷つきます」


内心突っ込み入れてるから無視はしてないだろ。


「言っておきますけど、ハートリーダーはさっき切りましたから。もうそんなに心を閉ざさなくて平気ですよ?」


「えっ?ほんとに?」


「はい。なにか隠したいことあるみたいなので。これ以上詮索するのも妻としてどうかと思いますし、信頼してるのに心を読みたがるのはわたしのエゴですし」


「ち、ちょっと待って妻って何?」


「ハルト様のお嫁さんってことです」


「ははぁ。さてはごっこか。ごっこ遊びなんだな。よろしい。本気で遊んでやるぞ、アイシャ」


「いえ、本気なんですけど・・・」


「覚悟しておれ。はぁーっはっはっは」


難聴系じゃないからちゃんと聞こえてるっつーの。


アイシャの戸籍、どうにかなんないかな。妻とか嫁とか言うだけは自由だ。表面上はそれでオッケーだろう。外人さんっぽく見えるから目立つけどな。



ーーー



俺のアパートに到着した。


「いいか、お隣さんが話しかけてきても大きな声で『ワタシニホンゴワカリマセーン』だからな。じゃあ練習。さん、はい!」


「ハルト様待ってください。こんな夜中にする練習じゃないと思います。お隣さん絶対寝てますよね?」


「明日うちの会社のスタッフが話しかけてきたら『ヨロシクオネゲーシマース』だからな。さん、はい!」


「待ってください!オネゲーの意味は?ちょっと!ハルト様!?」


深夜のテンションが入ったこのやり取りで疲れて寝ました。


長いんだよ!一日が!!


え?アイシャと何も無かったのかって?


下手に手を出して、結果社会的に死んで、厚底靴作れなくなる方が嫌だっつーの!

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