第2話

はるかちゃんと落ち合ってから乗った普通電車は空いていて、座ることができた。


「はるかちゃん、夏休みの宿題は終わった?」

「ううん、まだ全然」

「え?夏休みあと1週間くらいしかないよ」

「いつも、寸前でどうにかするタイプなの」

「へぇー」


計画性のないピアノ専攻か。ピアノ専攻って、わりと計画性がある人が多い気がするのに珍しい。


都会の花火大会は駅から大混雑だ。

改札を出ると、花火大会の会場までずっと大行列。


「東京の花火大会って、やっぱすごいな」


俺は、パッと隣にいるはるかちゃんの手を握った。


「ちょっ…圭吾くん!」

不意打ちのように手を握られたはるかちゃんは、俺を睨んで手を離そうとする。


「そんなに嫌?」

「手を握る意味が分からない…」


「混んでるから、手を離したらはぐれちゃうかも。手が嫌なら腕にする?肩でもいいけど」

しばらく考えたはるかちゃんは、手を離した。


「それなら腕にする」

「手、そんなに嫌なんだ…」


俺の腕に手を絡めながら、歩き出す。


「なんか…嫌なの」

「俺だから、嫌?」


これまで気になってたことを、勇気を出して聞いてみた。

『康平の伴奏をする』という条件を出して、半ば無理やりな形で付き合いを始めて数ヶ月。

はるかちゃんの俺への態度は、一向に変わらない。


何というか、雑だ。


康平と俺なら、確実に康平の方が好き、と言いそうな感じだ。


もし…手を握る相手が、俺だから嫌だ、と言われてしまったら、俺もそろそろ覚悟を決めないといけないかもしれない。


そうは思いながらも、否定される言葉を耳にするのは怖くてて、はるかちゃんの顔が見れない。


「誰でも…嫌なの」


いつもと違う、か細い声が聞こえる。


もしかしたら、手を繋ぐことに何かトラウマがあったのかもしれない。


「ごめん。嫌なことして。これからは、なんでも聞いてからにするから」

「うん…」

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