第7話

一年半ぶりに見た元カノに、すぐにでも話しかけたい気持ちが、タケルくんの眼差しをみたことで一気に冷めてしまっていた。


まるで、自分の高校時代を映しているかのような、はるかを見る彼の瞳。


当時をありありと思い出し、センシティブな気持ちに浸る。


でも、彼に話しかけるはるかの姿は、全く違う。

あんな風に、笑顔で親し気に話しかけられたら、どんな気持ちになっただろう…?


タケルくんは、当時の俺と同じような気持ちで、はるかのことを想っているだろう。

彼のはるかを見る眼差しは、先生を見るものじゃない。

好きで仕方ない、って目だ。


そこには、きっと男子高校生らしいドロドロとした欲情も含まれている。


…分かるなぁ…


深い、深いため息をつく。

手を繋ぎたい、キスしたい、抱きしめたい、もちろんその先も


タケルくん、君は何度、夢の中ではるかを抱いた?


今、自分が高校生時代に彼女にしていたことを、彼女の高校生の生徒がしているだろうと思うと、やるせない気持ちになる。


自分勝手も甚だしい…



はるかに話しかけるのは、彼の演奏を聴いてからにしようーーー


そう、はるかの生徒である彼の演奏を聴くために、東京から出張のついでに寄ったのだ。


一体どんな演奏をするんだろう。

インターネットを見ても、彼の名前ではヒットしなかったところを見ると、コンクールでの大きな入賞歴はないはずだ。


それでも、はるかがわざわざ俺に連絡してくるところをみると、きっと何かあるのだろう。


お手並拝見といこうじゃないか

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