第2話

「…で?私がいいって言えば、康平の伴奏してくれるの?」


その日の放課後、バイオリン専攻の君塚康平くんは早速、小宮山さんを連れてきた。

2年のクラス分けでも、またもや俺は小宮山さんと分かれてしまった。

この機会を逃したら、また話す機会を失うだろう。


「そうだね…去年まで小宮山さんが伴奏してたのに、俺に交代するとなると、君が嫌な気持ちにならないかと思ってね」


小宮山さんは、君塚くんの方をチラッと見る。


「康平はね、始めから北山くんに伴奏してもらいたかったの。でも、恥ずかしくて頼めないっていうから、去年は仕方なく私が伴奏しただけなんだよね。

だから、康平の友達としても、北山くんが伴奏してくれるといいなと思ってるんだけど…」


友達?

君塚くんと小宮山さんは、俺が思ってるより仲がいいのかもしれない。

たしかに、去年はクラスも一緒で、常に一緒に行動していた。

付き合っているような雰囲気もなかったから、特に警戒はしていなかったけど…


もし俺が伴奏を引き受けたら、この2人の仲を裂けるだろうか。


俺は、一か八の勝負に出ることにした。


「小宮山さんが俺と付き合ってくれるなら、伴奏してもいいよ」


どう反応するだろう?

正直、彼女の性格はよく分からない。


この告白が吉とでるか、それともーーー


しかし、予想外にこの告白に大きく反応したのは、告白された小宮山さんではなく、横にいた君塚くんだった。


へなへなと、その場に座り込んでしまったのだ。


「康平!ちょっとしっかりして…」

「だってはるかちゃん、僕、思い切って伴奏頼んだのに…」


駆け寄ってくる小宮山さんに涙目で話しかける君塚くん。


「北山くん、康平は本気で伴奏をお願いしてるの!冗談でかわさないで!」


「心外だな、俺は本気で言ってるよ。つまり、君次第ってことだ」


小宮山さんは、俺の言ってる意図が掴みきれないのだろう。

訝しげに俺を睨んでくる。


2人の間で、しばらくの無言が続きーーー


ヒックヒック…


すすり泣く声が聞こえてきた。


そこには、座り込み泣き始める君塚くん。


「僕…僕…北山くんが好きだったのに…」


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