宇宙怪獣 ヴェノンコーヴィル

 駄目だ、もう飛べない。

 落ちる。落ちた。



 ……かろうじて、生きている。


──負けた。負けてしまった。

──逃げる事が出来た。まただ。何故だ?


──何故だ?


…………。


──考えるのは、次の身体を見つけてからにしないとだな。


──ああ。丁度良く、そこにいる。



 通常の個体より一回り大きいウスタビガから、青い燐光が飛び出した。

 発光体はウスタビガに近付いたニホンヤモリを包み込み、融合した。


 ヴェノンコーヴィルは瀕死のウスタビガの肉体を捨て、ニホンヤモリの成体に憑依・融合した。

 そのまま抜け殻(ウスタビガ)に食らいつくと、あっという間に、鱗粉一つ残さず貪り尽くした。

 直後、ニホンヤモリの肉体が一回り、二回りと大きくなった。



──目、耳、肌、鼻、舌。全て、良し。

──さて。何故、逃げる事が出来たんだ? 答えの材料を持ち合わせて……


──いや。或いは……


──合っているか、確かめてみるか。



 巨大なヤモリが、夜闇を悠々と闊歩する。

 時折、淡く青く明滅しながら。

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